第97話 十二英雄
エクニス高原の入り口に三十人の冒険者たちが集まっていた。
全員が白色を基調とした服を着ていて、魔法の武器を持っている。
白い鎧を装備した女戦士が紫色の髪をした青年に歩み寄った。
青年は金の刺繍をした服を着ていて、両腕に金の腕輪をはめていた。太めのベルトにはSランクの証である金色のプレートがはめ込められている。
「アスロム様」
戦士の女が十二英雄の名を口にした。
「周囲に魔族やモンスターの気配はありません」
「みたいだね」
青年――アスロムは紫色の瞳で冷たい風に揺れる草原を見回す。
「とりあえず、今日は斥候を出して、残りは夜営の準備をしようか」
「いいのですか?」
女が首をかしげる。
「ゼルディアを狙って、他の団やパーティーも動いている情報があります。彼らに先を越されてしまうかもしれまん」
「それはいいことじゃないか」
「いいこと……ですか?」
「ああ。重要なのは六魔星のゼルディアを倒すことで、誰が倒したかは関係ないよ」
アスロムはにっこりと笑った。
「僕たち以外の誰かがゼルディアを倒してくれるのなら、楽でいいじゃないか。犠牲者も出ないしね」
「は……はぁ」
女は目を丸くしてアスロムを見つめる。
「ははっ。さすがアスロム様ですな」
白銀の鎧を装備した体格のいい重戦士の男が笑い出した。
「六魔星を倒す名誉などいらないということですな。やはり、あなたこそが真の英雄です」
「そんなことはないよ」
アスロムは首を左右に振る。
「十二英雄の中には僕より強い英雄が何人もいる。彼らこそが真の英雄さ」
「俺はそうは思いませんね。真の英雄は強さだけではなく、心も清廉でなければ」
「私もダグラスと同じ考えです」
女が言った。
「アスロム様は強くて優しい完璧な英雄だと思います」
「テレサもダグラスも身内びいきが過ぎるよ」
アスロムは肩をすくめる。
「まあ、君たちの期待に応えられるように、明日からしっかりと隠れ村を探すことにするか」
「はいっ!」
神樹の団の団員たちが元気よく返事をした。
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