第78話 洞窟5

 穴がたくさんある円形の場所に戻った僕たちは、メルトにアーマーゴーレムのことを伝えた。


「お前たちもか」


 メルトは険しい表情でそう言った。


「他にも、アーマーゴーレムに襲われたパーティーがいるんですか?」

「ああ。三つのパーティーが遭遇して、五人の冒険者が犠牲になった」

「五人も……」


 僕の口から漏れた声が掠れる。


「とりあえず、全てのパーティーに遠話の魔道具でここに戻るように伝えている」

「そのほうがいいだろう」


 キナコが言った。


「この洞窟にいるアーマーゴーレムは魔族が使う宝石で強化されている。正直、Dランク以下の冒険者では勝てないと思うぞ」

「……そうだな」


 メルトはじっとキナコを見つめる。


「キナコ、この状況をどう見る?」

「魔族が潜んでいる可能性が高いだろうな」

「やはり、そう思うか」

「ああ。特別な宝石でモンスターを強化するやり方は魔族がよくやる手だ。もしかしたら、この洞窟の中に魔族がいるかもしれんぞ」


 その言葉を聞いて、周囲にいた炎龍の団の団員たちの顔が青ざめる。


「アーマーゴーレムだけじゃなく、魔族もいるのか」

「まだ、魔族がいると決まったわけじゃない」

「だが、これだけ、アーマーゴーレムがいるのは魔族とドールズ教の信者たちが結託しているからじゃないのか?」

「それは……」


「落ち着けっ!」


 メルトが張りのある声を出した。


「仮に魔族がいたとしても、私が倒してやる。それにここには『魔族殺しのキナコ』もいるんだからな」


 その言葉に団員たちの表情が少しだけ和らいだ。


「メルト様」


 炎龍の団の副リーダー、グレッグがメルトに歩み寄った。


「こうなると、戦闘力の高い者だけで出口を探したほうがいいでしょう。魔族がいなくても、強化されたアーマーゴーレムは危険ですから」

「ああ。それと、アーマーゴーレムがいた場所を地図に書き込んでおいてくれ。その先に出口があるかもしれない」

「そうですね。その可能性はあると私も考えます」


 グレッグはアゴに手を当てる。


「そうなると、戦闘力が高い者を集めて、アーマーゴーレムを倒すパーティーを作ってもよさそうですね。リッケルたちなら、なんとかするでしょう」

「そのパーティーに私も入るぞ」

「メルト様もですか?」


 グレッグが驚いた声を出した。


「しかし、それでは全体の指揮が……」

「それはお前にまかせる」


 メルトはグレッグの肩を叩く。


「お前なら、私より上手く指揮を取ってくれるだろう」

「……はぁ。まあ、メルト様なら、アーマーゴーレムなど、楽に倒せるでしょうが」


 その時、Fランクのテトが穴から姿を見せた。

 テトの顔は青ざめていて、上着の一部に血がついていた。


「たっ、大変だよ。リッケルさんが……」


 テトは僕たちの前で転んだ。


「おいっ! リッケルがどうしたんだ?」


 メルトがテトに駆け寄った。


「りっ、リッケルさんがアーマーゴーレムに殺されたんだ!」


 テトは声を震わせながら言った。


「はぁっ? リッケルはBランクだぞ。どうしてやられたんだ」

「突然、アーマーゴーレムに僕たちのパーティーが襲われたんだ。それでばらばらになって、僕といっしょにいたリッケルさんがやられちゃって」

「バカな……」


 メルトのこぶしが小刻みに震え出す。


「場所はどこだ? 案内しろ!」

「う、うん」


 テトは慌てて起き上がり、穴に向かって走り出す。

 テトと炎龍の団の団員がその後を追う。


「僕たちも行こう」


 僕は仲間たちといっしょに走り出した。


◇ ◇ ◇


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