第77話 洞窟4

 十分ほど進むと、開けた場所に出た。

 そこは鍾乳石の柱がいくつもあり、低い場所に水が溜まっていた。


 この水は濁ってるし、飲めそうにないな。


 カチャリ――。


 金属がぶつかるような音が柱の近くから聞こえた。


「みんなっ! 柱の陰に何かいるよ!」


 僕が叫ぶと、すぐに三人は戦闘態勢を取る。

 柱の陰から青黒い鎧が見えた。


 あれは……アーマーゴーレムか!


 アーマーゴーレムは背丈が二メートルを超えていて、胴回りが三メートル以上あった。腕は長く、太い指先が地面に届きそうだ。


 普通のアーマーゴーレムじゃない。体が大きいし、鎧に魔法文字が刻まれている。


 それに……。


 僕はアーマーゴーレムの口の中に赤い宝石が埋め込まれていることに気づいた。


 あの宝石……魔族のダグルードが配下にしていた骸骨兵士にも埋め込められていた。


 どうして……いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない!


 アーマーゴーレムは一体ではなかった。二体……三体……五体……十体。


「ゴゴッ……」


 アーマーゴーレムが僕に近づき、太い腕を振り下ろした。

 僕は頭を低くして、その攻撃を避ける。アーマーゴーレムの手が地面を叩き、一瞬、周囲の地面が揺れた。


 パワーもあるし、スピードもなかなか速いな。


 僕は魔喰いの短剣を手に取り、魔力を注ぎ込む。青白い刃が一メートル以上伸びた。


 あの宝石が骸骨兵士を強化したものと同じなら、それが弱点でもあるはずだ。


 僕は体を低くしてアーマーゴーレムの側面に回り込み、魔喰いの短剣を振る。刃がアーマーゴーレムの足に当たり、浅い傷をつける。


 硬いな。この程度の魔力じゃ足を完全に切断できないか。

 それなら、宝石を狙う。


 キナコとピルンもアーマーゴーレムと戦い始めた。

 アルミーネは僕の背後に回りながら、呪文を唱える。

 アルミーネの右の瞳に魔法陣が浮かび上がり、黄白色の魔法陣が僕の前にいたアーマーゴーレムの頭上に具現化する。

 その魔法陣から雷が落ち、アーマーゴーレムの動きが止まった。


 今がチャンスだ!


 僕は左足を大きく踏み出し、魔喰いの短剣を突き出す。先端が赤い宝石に当たる寸前、その宝石を守るように口が閉じた。

 キンと金属音が響く。


 くっ、それで口の中に宝石を埋め込んでいたのかっ!


 僕は唇を強く噛んで、アーマーゴーレムから距離を取る。


 雷の魔法の効果が切れたのか、また、アーマーゴーレムが動き出す。


「まずいのだ!」


 ピルンが僕の背中に背中を当てた。


「このアーマーゴーレムは硬くて重いのだ。マジカルハンマーでも倒すのに時間がかかってしまうのだ」


「足を狙え!」


 キナコが叫んだ。


「こいつは頑丈だ。ならば動けなくすればいい!」

「了解なのだ!」


 ピルンの紫色の瞳が輝き、瞳孔が縦に細くなった。


「狂戦士モード発動なのだーっ!」


 ピルンはアーマーゴーレムに駆け寄り、腰を捻りながらマジカルハンマーを振った。巨大化したハンマーがアーマーゴーレムの足に当たり、ヒザの部分ががくりと折れる。

 アーマーゴーレムの巨体が傾き、横倒しになった。


 それなら僕は魔法のポケットに収納している特別な紙を使って……。


「『粘着網』!」


 粘着性のある紙の網が具現化し、三体のアーマーゴーレムの動きを拘束する。


「それでいい!」


 キナコが動けなくなったアーマーゴーレムに近づき、高くジャンプした。くるりと体を反転させて、肉球でアーマーゴーレムの顔を叩く。

 ガラスが割れるような音とともに閉じていた口が開き、砕けた宝石の欠片が地面に落ちる。


「ゴ……ゴゴ……」


 アーマーゴーレムは仰向けに倒れて動かなくなった。


 やっぱり、宝石が弱点か。


 素早く視線を動かすと、アルミーネに近づくアーマーゴーレムが見えた。


 そうはさせない!


 僕は一気にアーマーゴーレムに近づき、さっきの二倍の魔力を魔喰いの短剣に注ぎ込む。刃の輝きが増し、形が三日月のように変化する。


「これでどうだっ!」


 僕は具現化した紙の足場に飛び乗り、力を込めて魔喰いの短剣を振る。

 アーマーゴーレムの頭部が半分に斬れ、口の中にあった宝石が砕ける。


 よし! これならいける!


 僕は正面から近づいてくるアーマーゴーレムに突っ込んだ。


 数分後、全てのアーマーゴーレムを倒して、僕は深く息を吐き出す。


 強いモンスターだった。一発でもパンチを食らえば、体の骨が砕けて死んでいたな。


「ドールズ教の信者がアーマーゴーレムを配置したんだろう」


 キナコが砕けた宝石の欠片を手に取る。


「パワーとスピードを強化する効果がありそうだな。それにこの宝石で敵の動きを探知することもできるようだ」

「それで通常は口を開いて戦っていたってことか」

「ああ。口を閉じたアーマーゴーレムの反応が少しだけ遅れていたからな」

「キナコ。この宝石、ダグルードが骸骨兵士を強化してた宝石と似てるね」

「……ああ。もしかしたら、狂信者どもは魔族と関わってるのかもしれん」


 キナコの牙がカチリと音を立てる。


「これは、一度戻ったほうがよさそうね」


 アルミーネが言った。


「アーマーゴーレムの情報は伝えておいたほうがいいと思う」

「そうだね。他の場所にも配置されているかもしれないし」


 僕は動かなくなったアーマーゴーレムを見つめた。


◇ ◇ ◇


 お知らせ


 「雑魚スキル」と追放された紙使い、真の力が覚醒し世界最強に ~世界で僕だけユニークスキルを2つ持ってたので真の仲間と成り上がる~のコミカライズが決定しました。


これも原作小説を応援してくれた皆さんのおかげです。


ありがとうございます。大感謝です。

詳しい情報がわかりましたら、またお知らせします。

原作小説も、現在2巻まで発売中! 書き下ろし小説もあるのでよろしくです。

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