第76話 洞窟3
「全員、聞いてくれ!」
メルトが大きな声を出して、冒険者たちを集めた。
「これから、手分けして出口を探すことにする」
「他に出口があるのか?」
Cランクの冒険者がメルトに質問した。
「それはわからない。だが、現状は別の出口を探すしかない!」
きっぱりとメルトは言った。
「この洞窟は広くて深い。別の出口が見つかる可能性はある。ただ……」
「ただ、何だ?」
「ルーガルは『本当の恐怖はこれから始まる』と言っていた。他にも罠があると考えたほうがいいだろう」
その言葉に冒険者たちの表情が強張る。
「なので、ランクの低い冒険者のパーティーは炎龍の団の団員といっしょに行動してもらう」
「ああ。そのほうがいいだろう。EランクやFランクの冒険者もいるからな」
「では、パーティーのリーダーはグレッグのところに集まってくれ」
グレッグが右手を上げると、そこにパーティーのリーダーたちが集まっていく。
十分後――。
「私たちはこの四人で行動することになったから」
アルミーネが言った。
「Aランクのキナコがいるし、私もCランクで錬金術師だからね」
「ピルンだって限りなくSランクに近いDランクなのだ」
ピルンが薄い胸を張った。
「ピルンは強いけど、Sランクに近い、は言い過ぎでしょ」
アルミーネはピルンに突っ込みを入れながら、言葉を続ける。
「メルトさんも私たちのパーティーに期待してるみたい。なんとか、出口を探してくれって、頭を下げられたよ」
「出口か……」
僕は三十以上の穴を見回す。
探すのは大変そうだな。でも、やるしかない。食料も水も無限にあるわけじゃないから。
冒険者たちがばらばらに分かれて穴の中に入っていく。
「じゃあ、私たちも動こうか」
アルミーネが右側にある穴を指さした。
穴の中は暗く入り組んでいた。
アルミーネが飴玉のような大きさの球体を魔法のポーチから取り出す。彼女が呪文を唱えると、その球体が浮かび上がり、黄白色に輝いた。
「照明用の魔道具?」
僕の質問にアルミーネがうなずく。
「うん。私が作ったんだ。光が強くて長時間持つから、ダンジョンの探索に役に立つんだよ。売れば金貨一枚以上にはなるしね」
「そんなに高く売れるんだ?」
「まあね。一応、上級の錬金術師ですから」
アルミーネは自慢げに胸を張った。
「うむ。アルミーネはすごいのだ!」
何故かピルンも胸を張った。
「他にもシャワー用の水筒を発明したのだ」
「へーっ。あれってアルミーネが発明したんだ? 聖剣の団でも使ってる人多かったよ」
「そうなのだ。女の冒険者に大人気でピルンも一個もらったのだ。でも、アルミーネはピルンにくれない魔道具もあるのだ」
「んっ? 何をくれないの?」
「胸を大きくする魔道具なのだ。その魔道具があるから、アルミーネの胸は大きいのだ」
「そんな魔道具作ってないからっ!」
アルミーネが顔を赤くして、ピルンの頭を強めに叩いた。
「ううーっ」
ピルンが頬を膨らませる。
「でも、魔道具を使わないと、そんなに大きくならないのだ」
「なるよ! 普通に暮らしててもなるよ!」
アルミーネが胸元を手で隠しながら言った。
「ヤクモくんの前で変なこと言わないで」
「何でヤクモ限定なのだ?」
「……とにかく、胸のことはもういいからっ!」
アルミーネはピルンの手を掴んで、早足で歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます