第68話 ヤクモの強さ
「ちょっと、ヤクモくん!」
アルミーネが僕の腕を掴んだ。
「何、あの人たち。すごく失礼なんだけど」
「僕が最初に組んだパーティーの仲間なんだ」
「じゃあ、聖剣の団の?」
「新人だよ。全員、複数の戦闘スキルを持ってて、なかなか強いと思うよ」
「なかなか強くても、失礼すぎるよ」
アルミーネの頬が風船のように膨らむ。
「第一、ヤクモくんのほうが絶対、あの人たちより強いから」
「そうかな?」
「当たり前でしょ。今のヤクモくんなら、一対三で戦っても余裕で勝てるから」
「それは難しいと思うよ」
「難しくないからっ!」
アルミーネがピンク色の眉を吊り上げる。
「前から思ってたけど、ヤクモくんは自己評価が低いよ。最近はキナコとの模擬戦だって互角に戦ってるでしょ」
「でも、最後にはいつも負けてるし」
「それは当然だ」
無言だったキナコが口を開いた。
「俺はAランクの格闘家だぞ。模擬戦とはいえ、そう簡単に負けてたまるか」
キナコは白い爪で頭をかいた。
「だが、最近のお前の強さは俺の想像を超えている」
「そうなの?」
「ああ。お前は戦闘センスがいいし、瞬時の判断が速い。こっちの予想を外す攻撃を
仕掛けてくることもある。お前の強さはホンモノだ。俺が保証してやる」
「ほらーっ!」
アルミーネが僕の肩をパンパンと叩く。
「私たちの目を信じなさいって!」
「……うーん」
僕は腕を組んで考え込む。
たしかに僕は強くなったと思う。頭をケガしてから思考速度が速くなって、戦闘時に正しい選択を瞬時にできるようになっている。
それに【魔力極大】のおかげで、基礎魔力が常人の三千倍以上の730万マナもあるから、【紙使い】の能力を存分に使うこともできる。
今の僕なら、Bランクの冒険者が手こずるような強いモンスターもソロで倒せるだろう。
だけど、その程度で強いと言えるんだろうか?
この世界には多くの強者が存在する。
AランクやSランクの冒険者の中には、ソロでドラゴンと戦える者がいる。
それにゲム大陸最強と言われている十二英雄は、町や村を滅ぼす災害クラスのモンスターや多くの魔族を倒している。魔王ゼズズの幹部である六魔星ガルラードでさえ、十二英雄のリムシェラに倒されたんだ。
それぐらい強くなれたら、お金をたくさん稼げる。孤児院の土地を買い取ることだってできるんだ。
もっと強くならないと!
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