第67話 アルベル、ダズル、カミラ
ライザにアルミーネたちを紹介していると、革製の鎧を装備した茶髪の男が目に入った。
あれは……聖剣の団のアルベルだ。後ろにダズルとカミラもいる。
アルベルたちと僕は聖剣の団でパーティーを組んでいた。彼らは複数の戦闘スキルを持っていて、現在はEランクの冒険者になっている。
「よぉ、ヤクモ」
アルベルが僕に近づいてきた。
「お前のパーティーもこの仕事を受けたのか?」
「うん。炎龍の団のリーダーと話す機会があって」
「Sランクのメルトか」
アルベルの眉がぴくりと動く。
「……お前、強い奴に取り入るのが上手いな。いつの間にか、キナコがいるパーティーに入ってるし」
「そんなつもりはないけど……」
僕は近くにいたキナコをちらりと見る。
「でも、キナコには戦い方を教えてもらってるよ」
「戦い方ねぇ」
アルベルは鼻で笑った。
「運よくEランクになれたお前がAランクの冒険者に戦い方を教えてもらっても意味ないだろ。実力が違いすぎるからな」
「そうだよね。ひひっ」
ダズルが気味の悪い声をあげる。
「ヤクモは戦闘スキルを持ってないし、どうせ鍛えてもたいして強くなれないよ。砂漠に小麦の種をまくようなものさ」
「ふふっ、上手いこと言うわね」
カミラが目を細めて口角を吊り上げる。
「でも、ヤクモも弱いなりに頑張ってるのは偉いじゃん。使えないユニークスキルしか持ってないのにさ」
「紙を具現化するだけのスキルだからね。しかも、その紙は消えるから、売ることもできないし、何の意味もないよ」
「まっ、ヤクモは運だけはいいから。雑魚スキルでも生きていけるでしょ」
「それはどうかな。冒険者は一つの不運で死んじゃう職業だし、本当の実力がないと、長生きはできないと思うよ。ひひっ」
ダズルとカミラは顔を見合わせて笑う。
「おいっ、ヤクモ!」
アルベルが僕の顔を指さす。
「この仕事はドールズ教の信者たちと戦うことになるかもしれない。その時に俺たちの足だけは引っ張るなよ」
「うん。気をつけるよ」
「……ちっ」
アルベルは舌打ちして、ダズルたちといっしょに去っていった。
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