第41話 危機
その言葉に反応して、僕たちを取り囲んでいた骸骨兵士たちが動き出した。
「おっ、応戦しろ!」
Bランクの団員が叫ぶと、呆然としていた他の団員たちが我に返った。
「シルフィール様を守れーっ!」
四人の団員が倒れているシルフィールに駆け寄り、他の団員たちは近づいてくる骸骨兵士に武器を向ける。
「俺たちも動くぞ!」
キナコが言った。
「調査団の奴らを逃がすんだ!」
「それなら、南側の骸骨兵士を倒して!」
「南側でいいのか? そっちは大穴があるぞ」
「大丈夫だから!」
「……わかった」
キナコは正面にいた骸骨兵士の曲刀の攻撃を避けてジャンプする。ピンク色の肉球が骸骨兵士の額の宝石を砕いた。
「カ……カカ……」
三体の骸骨兵士が側面からキナコに突っ込んできた。
「そうはさせないっ! 『魔防壁強度四』!」
僕は白い紙の壁を具現化した。その壁が骸骨兵士の行く手を塞ぐ。
「ヤクモくん、魔法を使うから!」
アルミーネの声が背後から聞こえた。
空中に数十の小さな魔法陣が現れる。その魔法陣から、オレンジ色に燃える炎の剣が出現した。その剣が数十体の骸骨兵士たちに突き刺さる。
骸骨兵士たちは炎に包まれて、次々と倒れた。
これで南側に骸骨兵士はいなくなった。
僕は骸骨兵士の死体を飛び越え、大穴のふちまで移動する。
向こう側まで……五十メートルってところか。具現化時間が長い紙を使えばなんとかなる。
僕は地形をしっかりと確認して、意識を集中させる。
数万枚の紙が具現化し、それが僕の意思に従って動き出す。
紙と紙が組み合わさり、巨大な橋を作った。
この橋なら、一気に距離を稼いで逃げることができるはずだ。
「皆さん、こっちです!」
僕は調査団の人たちを手招きした。
「この橋から逃げてください! 急いで!」
「こ、この橋は?」
調査団のリーダーのサイラスが口を半開きにして、紙の橋を凝視する。
「そんなことより、早く逃げてください!」
「あ、はっ、はい! みんな、逃げるんだ」
サイラスは他の調査団の人たちといっしょに橋を走り出す。
よし! これで残りは月光の団の人たち……あ……。
メタリックドールから逃げているコリンヌの姿が目に入った。その背中にはシルフィールが背負われている。
まずい! まだ、シルフィールは意識が戻ってないみたいだ。
僕はコリンヌを追っているメタリックドールに向かって走り出す。
メタリックドールの弱点は首の下の核だ。それがわかってれば、なんとかなる!
僕はコリンヌを守るようにメタリックドールの前に立った。
メタリックドールの細長い右手が斜めに振り下ろされた。その攻撃を僕は魔防壁で止める。一瞬、メタリックドールの動きが止まった。
僕は魔喰いの短剣に魔力を注ぎ込む。青白い刃が長く伸び、メタリックドールの首の下に突き刺さった。
しかし、刃の先端が途中で止まる。
くっ! 硬いな。核まで届いてないか。
「ヴ……ヴヴ……」
メタリックドールの左手が僕の腕を掴んだ。みしりと骨がきしむ音がする。
くっ! パワーもオーク並みに強い。
僕は顔を歪めながら、魔喰いの短剣に追加の魔力を注ぎ込んだ。青白い刃の輝きが増し、その先端がメタリックドールの背中から突き出る。
ガラスが割れるような音がして、メタリックドールの動きが止まった。
僕は素早くメタリックドールから離れる。
数秒後、メタリックドールが爆発した。
よし! なんとか倒せたか。魔力をたくさん使っちゃったけど仕方がない。
僕はぽかんと口を開けているコリンヌに駆け寄った。
「コリンヌさん。橋を渡って逃げてください!」
「ですが……」
「今はシルフィールさんを安全な場所に移動させるのが先決です」
「……わかりました。よろしくお願いします」
コリンヌは僕に頭を下げて走り出した。
僕は骸骨兵士と戦っている月光の団の団員たちを見回す。
このままじゃダメだ。骸骨兵士の数が多すぎる。
それに……。
二体のメタリックドールが僕に近づいてきた。
今度は二体か。
僕の額から冷たい汗が流れ落ちる。
紙の橋と魔喰いの短剣で基礎魔力を五割以上使っている。まだ、余裕があるけど、そろそろ気にして戦ったほうがいいか。
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