第33話 聖剣の団の戦い

 地下都市の東側にある広場で、聖剣の団のガルディたちが数十体の骸骨兵士と戦っていた。


「ガルディさん!」


 Bランクのアドルがガルディに駆け寄った。


「サポートメンバーの二人がやられた。この骸骨兵士、普通じゃない」

「ちっ! この程度のモンスターでやられるのか」


 ガルディは舌打ちをして、赤い刃の短剣を振った。近くにいた骸骨兵士の頭部が切断され、胴体が横倒しになる。


「サポートメンバーを二つに分けて、ウーゴとラモンに指揮させろ!」


 そう言いながら、ガルディは呪文を唱えた。

 黒い球体が具現化し、それがどんどん大きくなる。


「食らえ! 『闇魔球』!」


 ガルディが左手を動かすと、その動きに合わせて黒い球体が骸骨兵士にぶつかった。

爆発音がして、骸骨兵士の骨が四散する。


「全員まとめてかかってこい! Aランクの魔法戦士の力を見せてやる!」


 ガルディは次々と黒い球体を具現化し、近づいてくる骸骨兵士を倒し続ける。


 数分後、全ての骸骨兵士を倒したガルディは、他の団員と合流した。


「やられたのは、五人です」


 アドルがガルディに報告した。


「ヘンリクとタルストと……」

「死んだ奴の名前なんてどうでもいい! 他は問題ないんだな?」

「は、はい。ケガ人はいましたが、回復薬を使いましたから」

「……はぁ。俺が指揮してる時に死にやがって。評価が落ちるじゃねぇか」


 ガルディは足元に倒れている骸骨兵士の死体を蹴った。


 ――くそっ! 聖剣の団に入ったばかりでこんなことになるなんて。ついてねぇな。


「……こうなったら、全員まとまって動くぞ。まだ、骸骨兵士がいるかもしれないからな」

「そうですね」


 アドルがうなずく。


「サポートメンバーはDランク以下の団員ばかりだから、強化された骸骨兵士と戦えば、さらに犠牲者が出る可能性がありますし」

「……そうだな。使えるのはお前とCランクのウーゴ、ラモンだけか」


 ガルディは頭部に生えた狼の耳をかいた。


「とにかく、月光の団より先に調査団を見つけるぞ。そうすれば面目も立つ。お前ら、気合いれろよ!」 


 その時、建物の陰から、黒い服を着た二十代半ばぐらいの男が姿を見せた。


 背丈は百八十センチを超えていて、すらりとした体形をしている。肌は青白く、長く伸ばした髪は銀色。額には魔族の特徴である黒い角が生えていた。


「まっ、魔族だ!」


 アドルが叫ぶと、聖剣の団の団員たちが一斉に武器を構える。

 ガルディも赤い刃の短剣を魔族に向けた。


 魔族は警戒しているガルディたちに無造作に近づき、牙の生えた口を開いた。


「お前たちは誰だ?」

「俺たちは聖剣の団の冒険者だ。お前が骸骨兵士を強化した魔族だな」

「そうだ。俺はダグルード」


 魔族――ダグルードはガルディたちを見回した。


「……ふむ。お前たちはいいか」

「いい? 何がいいんだ?」

「新たな奴隷にする必要はないということだ。もう、それなりの数の人族を奴隷にしたからな」

「それなりの数か。どうやら、調査団を拘束しているのはお前のようだな」


 ガルディが唇の端を吊り上げた。


「これは運がよかったぜ」

「運がよかった?」

「ああ。お前を倒せば、俺たち聖剣の団の評価が上がるからな」


 ガルディは上唇を舐める。


「アドル、ウーゴ、ラモン! お前たちは右に回れ。サポートメンバーは全員左だ!」


 ガルディの指示に従って、聖剣の団の団員たちが動く。


「残念だったな、ダグルード。調子に乗って一人で出てくるから、取り囲まれて逃げることができなくなる」

「逃げる必要などないだろう」


 ダグルードは淡々とした口調で言った。


「たかが二十人程度の人族など、どうにでもなる」

「それが普通の人族ならな」


 ガルディが一歩前に出る。


「お前にとって残念な事実だが、俺は特別なんだ。魔族を倒したこともあるしな」

「……お前は間違っている」

「間違ってる?」


 ガルディが首をかしげた。


「何が間違ってるんだ?」

「魔族といっても、強さはバラバラってことだ。オーガレベルの者もいれば、ドラゴンを越える強さを持つ魔族もいる」

「お前はドラゴンより強いって言いたいのか?」

「その通りだ。それに……」


 ダグルードが右手を上げると、周囲の建物から、二百体以上の骸骨兵士が姿を見せた。


 骸骨兵士たちはカタカタと歯を鳴らしながら、両手に持った曲刀を構える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る