第42話

「なあ、瀬野」


最近塾に通い出したヒロトとは別に上田と二人チャリで並んで話しながら帰っていた時、いきなり上田がそれまで話していた『物干し竿が今後どこまで進化する可能性を秘めているか』という話を止めてまで話題を変えてきた。


「うん? 」


「前から一度聞こうと思ってたんだけどさ、お前芽衣ちゃんのことどう思ってるわけ? 」


「はあ? 芽衣? そんな、ただの幼馴染としか考えたことねえよ」


「そうか? 俺もヒロトもお前たちと付き合い長いけど正直小学校からずっと見ててお前と芽衣ちゃんにはなんか入り込めない様な、壊しちゃいけない関係っていうかそんなのを感じんだけどな」


なんでこのタイミングで上田がその質問をぶち込んできたのか、その事の方が疑問で深く考えずにとりあえず思い付いた返答をした。


「それはお前やヒロトと仲良くなったのは小5の時だし、芽衣とは保育園からずっと一緒ってのがあるからなんじゃね? 」


「う~ん、なんかちょっと違うんだよなそういうのとは、じゃあ例えば俺が“芽衣ちゃんの事が好きだ”ってなってお前に相談したらどう思う? 」


え? 上田、そうだったのか?


「そ、そりゃ友達として協力するし応援するよ」


「じゃあ例えばこの前お前が川澄さんにした告白、あの事まだ芽衣ちゃん知らないけど“教える”って言ったらどうする? 」


言葉が詰まった。


「まああの件に関しては川澄さんがもう無かったことにしてって言ってるからそんなことは言わねえけどよ、それに俺が芽衣ちゃんに告白するってのも有り得ない話だけど」


なんなんだ? 上田の意図が分からない。


「そ、そうだよ。 俺は別に構わねえけど川澄が嫌がってんだからそんなことする必要ねえよ」


「お前なあ、 川澄さんがどうして“言うな”って言ってるかっていったら芽衣ちゃんの事を気にしてるからに決まってるだろ? それくらい考えたら分かるだろ。 つまり川澄さんから見ても芽衣ちゃんとお前の間には入れないわけよ」


「ん? 待てよ、てことは俺が川澄にフラれたのは芽衣に遠慮してってことで本当は俺のことが好きなんじゃね? 」


「カーッ!バカかお前は、端からお前なんか眼中に無えんだよ、忘れろ。それよりもホント芽衣ちゃんの前で暴走してギクシャクするようなことだけは絶対すんなよな」


もうその話題に返事をすることは無かったけど、上田には言ってないけどキスしたんだよなぁ、川澄と。しかも川澄の方から。

もしあの時俺の部屋に凌が入って来なかったらそのままベッドでってことになっていたかも知れないし、俺のことが好きじゃなかったらそんなこと出来ないよなぁ。

まあ上田が言うように芽衣の前では素振りは見せないにしても川澄のことは簡単に諦められるわけもねえんだよなぁ。

でも上田が言うように俺と芽衣がいい仲になるなんてことも全く想像したことも無かったもんなぁ。 けどアイツだって俺のことは幼馴染としてしか見てないだろうしな、やっぱり無えよそんなこと。けど芽衣ともキスしたんだよなぁ、ガキの頃だけど。

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方向性の無い高校生達は今日も屋上で光合成をする 吉井礼 @nicochansahochan

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