第34話

「発電所!」


「正解、じゃあこれは?」


「む…… む…… 」


「何やってんの?」


四月になり、三年になった俺たちだけど、なんの緊張感も危機感もなくいつも通りバカみたいなスプリングデイズを過ごしていた。

始業式の舞台で並んだ先生達の列に笹井や峯岸の姿はなく、新しい教頭と体育教師が他の赴任してきた何人かの先生と一緒に紹介された。 あの二人がどうなったのかは聞いていないし興味もない。

岡野さんの倉庫は完全に封鎖され学生達が近づくことももちろん禁止だ。 けれどあそこでサボってた奴らはどうせまた別の場所でも開拓するだろう。


「ん? ヒロトの勉強の成果を確かめてんのさ、ほらコイツ俺たちのこと差し置いてずっと勉強してただろ? どれだけ賢くなったのかテストしてたんだよ」


クラス替えで俺と芽衣は同じクラスになり上田とヒロトはそれぞれ別のクラスになってしまった、けど休み時間にはやっぱり三人で居ることの方が多い。 特進クラスの川澄は俺たちとは校舎も違うから学校に居る時はたまに屋上で会うくらいだった。もちろん家に帰れば隣同士で、みんなには言わないけどたまに一緒に散歩に行ったりと楽しくやっている。


「裁判所! 」


「正解! やるなヒロト」


「なんで受験を控えた高校三年生が地図記号のテストなんかやってんのよ! 」


呆れた様子で芽衣が俺たちに絡んでくるのももはや日常と化している。


「そんなこと言って芽衣は答えられんのかよ」


「バ、バカにしないでよ! アンタたちと違ってこっちは真面目に学生やってんのよ、それくらい出来て当たり前でしょ! 」


「じゃあコレは? 」


「えっ? えっと…… えっと…… 分かった消防署! 」


「ブッブー、 桑畑でしたー こんなのも分かんねえのかよ」


「ムッ、何よ桑畑って、桑畑なんか見たことも無いもん! 私の生きてきた17年間で桑畑に用事があったことなんか1ミリも無いもん! なんで桑畑なの? それなら太陽光パネルの方が見かけるわよ! そっちの地図記号作りなさいよ! 」


「あるよ、芽衣ちゃん。 太陽光パネルの地図記号」


「えっ嘘!あるの? 」


「それとちなみに桑畑の地図記号は25000分の1の地図からは無くなっちゃったんだよ」


「「「マジでーっ!?」」」


「ヒロト、お前ほんとにヒロトか? 」


ヒロトは眉間に手を当てると掛けてもない眼鏡をクイッと上げてほくそ笑みやがった。 俺はヒロトの眉間にデコピンをくれてやった。

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