第15話

「じゃあ瀬野君たちは小学校からずっと一緒なの? 」


昼飯を食べた俺は上田とヒロト、そして川澄と一緒に屋上で授業をサボっていた。

サボっていたと言ってしまうと聞こえが悪いが、川澄の言葉を借りるなら俺たちは をしていたんだ。


「そう、クリームシチュー以来のツレ」


「クリームシチュー? 」


「俺、家ではいつもシチューをご飯に掛けて食べてたんだ、けどガキの頃ってその事が恥ずかしくて人前では決してやらなかったの。 その日の給食でもきちんと別々に食べていたんだけど、ちょうど半分くらい食べた時にスプーンに掬ったシチューを見ていたらどうしてもご飯に掛けたくなってしまって。 10秒くらいそのまま固まってたと思う、 「ええい! 」って思いきってご飯に掛けて急いで食べたんだよ。 美味かったぁ。 けどそのあとすぐに後悔の念が押し寄せてきて、「ああ~ やっちゃった~ 」って、こんな食べ方クラスメイトに見られたら馬鹿にされるだろうなぁって、そんな気持ちのままふと顔を上げたら向き合った前の席に座る上田とヒロトがニヤッて笑って、自分のシチューの入ったお椀をご飯にガバーッて。 それで「うめえっ! うめえっ! 」って一気に食べて「瀬野サイコー 」って親指立ててんの、 それまでそんなに親しくなかったけど、そこから一気に仲良くなったかな」


「ふ~ん、親友かぁ…… いいなぁ、私には親友って呼べるような友達は出来たことがなかったから」


「俺たちもう親友でしょ? こうやって『屋上』っていう秘密の場所を共有してるワケだし」 上田がすかさずアピールする。 こういう時の上田には抜かりがない。


ガタンッ 急に背後で何かが倒れる音がして俺たちは階段のある塔屋に一斉に目を向けた。


「痛てててて…… 」


「芽衣!? 」


「うっす」 そこには顔面から転んでも飽くまで平静を装う芽衣の姿があった。どうやら塔屋の出口の一段高くなっている所で躓つまずいたようだ。


「大丈夫か? 起き上がれるか? 」


「同情するくらいならさっさと手でも差しのべなさいよ」


「お、おう、 ほら」 俺の手を掴み立ち上がった芽衣は制服の汚れを手で払い落とすと俺たちを睨み付けた。


「ったく、またサボり? いつもいつもアンタたちは」 たぶん相当恥ずかしくて相当痛かったのだろう。芽衣は顔を真っ赤にして泣きそうになるのを押さえながら強がりを言った。そして俺たち三人よりも少し後ろにいた川澄をチラッと見ると無言で睨み付けた。


「こ、こんにちは」 川澄が困ったような表情で挨拶をする。


「特進の川澄さんですよね? いいんですか? こんなところでコイツらと一緒になってサボったりして。 馬鹿が伝染うつるだけですよ? 」


「えっと、たしか…… 小山こやまさんでしたよね? 瀬野君の友達の」


「いいえ、小山内おさないです、


芽衣が何をぷりぷりしているのかよく分からなかったが、この張り詰めた空気を察知して、この場から離れようと後ずさった上田とヒロトの学ランの裾を、俺は全力で掴んで逃さなかった。

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