5.半魚人とホムンクルス

「つまり、お前は人間界ってやつから来たって言うのか」


「大体そんな感じ。魂だけ、ズィーの作ったこの体に乗り移った様な」 


 ジョシュはざっくりと自分の身の上を説明した。


「聞いて悪いが、おれにはさっぱりだ」予想通りの答えが返ってきた。


「おれは、てっきりお前が家族を探しているのかと思った」


「家族?」


「実は、おれの種族はほとんど絶滅してるんだ」


「そうなの?」


 ジョシュは素直に驚いた。ズィーのような有角人も、ラーバン夫人のような爬虫人、半魚人もたくさん見てきたからだ。


「おれは半魚人の白片族っていって、エルフとかオークに殺されたから仲間がいないんだよ。子供のころに家族はみんな殺されて、ラーバンさんの好意で家においてもらってるだけだ」


「そっか。なんかごめん」


「おれこそ変な話して悪かった」


「僕こそ、まさか、えっと、君がそんなに大変だなんて」


「おれは、シロムーだ」


 半魚人はそう名乗った。


「僕は、ジョシュ。名前はあまり気にしないで」


「わかった。訳アリだな。でも、おれは全然大変じゃないぜ。ラーバンさんたちは親切にしてくれてるし、料理を教えてくれる約束だってしてるんだ」


「それなら、僕だって、先生がいるし」


 ついジョシュは張り合ってしまった。だがズィー自身に、ジョシュへ何かを教えようなんて、そうは見えない。


「そうか? なら少しは心配するだろ。全然探しに来ないぞ」図星だった。


「でも……」


「ごめんごめん。なんかお前、からかうと面白いな」


「シロムーこそ、勝手に人にいたずらして穴に落ちるとか、かなり面白かったよ」


「おまえ、随分嫌なことを言うな」


「シロムーこそ、すぐに逃げたからこんなに口が達者だとは思わなかった」


 ジョシュがそういうと、ふっ、とシロムーが笑って吹き出した。その様子に、思わずジョシュも笑ってしまう。


「本当に、さっきはごめん。悪かったよ」笑いながらシロムーはそういった。


「全くだよ」ジョシュも呆れかえって言った。


「でも、なんであんなに追いかけてきたんだ?」


「初対面であんないたずらしてきたら、なにか理由があるって思うよ。なんであんなことを?」


「ごめん、それはちょっと言えないんだ」


 申し訳なさそうにシロムーは言う。


「でも、お前に恨みはないし、先にお前のこと知ってたら、多分こんなことはしなかった」


「大丈夫。シロムーと喋ったら、そんな悪い奴じゃないってなんとなくわかったし」


「本当か?」


「もちろん。だって……」


 言いかけて、ジョシュが今度は言葉を飲み込んだ。なんとなく、勝手に親近感をもってしまっていた。だから、急に……


「友達、でいいだろ?」


 ジョシュがつい言ってしまいそうになって飲み込んだ言葉を、シロムーが言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る