【オマケ】

※この連載の説明のところからの続きです。


「店主、これを買おう」


 あなたはそう言って、すみの方に転がっていた刹那晶せつなしょうを拾いあげた。

 それにしたのには特に理由は無い。

 今日買おうと思ったのだって、ふとこのあいだ見た露店がまだやっているのか気になったから、ちょっとのぞいてみようと思ったのだ。思いのほか売れているようだったから、自分も気まぐれに買ってみるか、と、そう思ったからだった。


「あいよ。それなら……銅貨2枚だ」


 1、2、と、あなたは小銭袋から銅貨を数えて店主に渡した。

 参考までにどうやってを付けているのか聞いてみれば、それは他のよりちょっとくもっているからだよ、と快く教えてくれた。

 と同時に、そんなもんか。と思った。


 水晶というからにはそれなりに値が張るのかと思ったが、そんなことはなかったらしい。精々、酒のつまみが一つ減る、その程度の金額だった。

 それを覗き込もうとすると店主に止められる。それなりに長いものもあるから、とりあえずは帰ってから見てみちゃあどうだい、と言われたのだ。


 それもそうだ。とあなたは納得し、帰路きろについた。


 家に帰ったあなたは、酒を片手に刹那晶を覗き込む。

 そこには、石造りの空間とローブを着た人物が見えた……。


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 あなたは、まぁまぁ楽しめたか、とそう思って刹那晶から目を離した。

 それなりに集中して見ていたためか、酒のさかなにと思っていたのだが、酒は少しも減っていない。

 あなたは苦笑いして生温いそれをすすった。



 しばらくして、ふとあの露店はどうなっているのかが気になって覗いてみることにしたが、そこはがらくたを売る露店に変わっていた。

 そこの店主に聞けば、もうずっとここで商売していると言う。

 そのがらくたは何か特別な能力を持っているか?と聞けば、鼻で笑って、見ての通りのもんですよ。と肩をすくめて言われた。


 あなたは店主の勘違いか、はたまた自分が場所を間違えたか、と記憶をさかのぼるも、当時、それほど周辺を意識して見ていたわけではないので、明確には分からなかった。


 まぁ、そんなこともあるか。と思い直して、あなたはもののついでに露店巡りを始めた。あの時の露店もそうやって見つけたものだった。


 新しい物語を探して、あなたは再び歩き始めた。


短編集(5月分) 完結

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短編集(5月分) グミ好き @gumisuki59

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