第67話 激突 最恐 VS 最強 決着――『運命の始まり』
勝負の世界に待ったなし! など存在しない。
勝つか負けるか。
あるのはそれだけ。
それ以上でもそれ以下でもない。
故に――勝ちは勝ち、負けは負け。
それ以上でもそれ以下でもない。
どんな奇策を使われようが――そこに変わりはない……。
「違う! 今はそれどころじゃない!」
紅の奇策中の奇策に一瞬で形成逆転。
つまり流れが変わった状況に朱音の危機感が限界を超えた。
朱音の身体に流れる血が死を恐怖した。
遂に最強が最恐に落ちた瞬間――
バチンッ!!!
雷が落ちたように激しい衝撃が朱音の身体を刺激する。
脳が強く強く興奮する。
――本物か偽物か……わからない強さ……あ~実に素晴らしいわ♪
音楽のワンフレーズが朱音の理性を一瞬で正常に戻したのだ。
その光景を見た紅が悪魔的な笑みを浮かべる。
そして朱音も。
超新星爆発から生まれた爆風の前では二人の身体など軽く暴風の渦へと吞まれていく。
そんな中で「おいおい勘違いするなよ、誰がこれが俺の最後の切り札って言った!?」と煽るように声を上げる最恐の右手に爆発のエネルギーが集まり始める。
「まさか!? はっ!? なによ! その再利用しまくりのコンボは!?」
超新星爆発で生まれた爆発のエネルギーを外に逃がすのではなくその一部を手のひらに掌握し始めた紅の右手に生まれるプラズマ。
紅が使った『圧縮』。
効果は言葉通りのスキルで誰もが入手できるような低級スキル……。
なのだが、この男が使う場合に限っては圧縮対象が対象なだけに空気の強引な圧縮によって危険極まりない激しい光を放つ物を創造してしまう。
朱音は後方下部の爆発の中心地と前方の紅を素早く確認した。
「やっぱりHPがない時のダーリン……頭可笑しいわ……ふふっ♪」
「これが俺様表裏究極全力シリーズ『ブラックレクイエム』だぁ!!!」
既に核爆発まで時間はない。
紅は最後の抵抗をする。
エリカはやはり――最後まで紅を支える根源として存在していた。
紅はアイテムツリーから取り出した【亡命の悪あがき】を左手で使う。
自爆特攻でありながら十秒間に限り相手からすれば撃墜負荷の極悪非道のミサイルとなった紅はここに来て普通のプレイヤーと同じブースターを使い空を飛行する。
ただし――紅仕様のソレは。
例えるなら車がガソリンを必要とする所を航空燃料やニトロに変えた代物で加速に関しては一級品だった。
曲がるなど必要ない。
漢は全速前進の直線勝負!
みたいな尖りに尖ったブースターを使う。
もう製作者は語るまでもないだろう。
こんな紅専用装備を量産する者はこの世に一人しかいないのだから。
「な、なによ……一秒一秒あり得ないぐらい死亡フラグ量産される悪魔的な環境は!?」
初見での対応に焦りを見せた朱音。
彼女にとって一つ一つなら対したことない。
全て今まで見て攻略してきたからだ。
だけど全てがこの場で強化され、ありとあらゆる瞬間やキッカケをトリガーに無限に地至級の神災が量産されれば話しが変わってくる。
「おいおい! ふざけるなよ!?」
紅はプラズマ弾頭ミサイルとして特攻しながら叫んだ。
朱音は確かに焦っている。
今まで――。
ここまでして――。
やっと――追い込んだ感触が確かにあった。
だけど――。
槍を手放した手には【亡命の悪あがき】の空瓶があった。
紅が使うタイミングで脊髄が脳より早く命令を出し冷静に対象していたのだ。
つまり紅から見た朱音は十秒間正真正銘の完全無敵のプレイヤーとなったわけだ。
ここまでして――紅は一か八かの賭けにでるしかなかった。
後は【亡命の悪あがき】をどちらがコンマ一秒の世界で早く使ったかだった。
「とりあえず喰らいやがれ! 俺様超全力シリーズプラプラ弾頭ミサイル!」
朱音は突撃してきた紅を受け入れた。
そして
「さぁ、一緒に地獄に落ちましょうダーリン♪」
苦痛に顔を歪めながら両手でしっかりと紅の身体を抱きしめた。
観客席のある個所から舌打ちや「死ね」「後で覚えてなさい」などなどどちらを対象に言われたかわからない言葉がささやかれる。
傍から見れば試合中にイチャイチャしているようにも見えるらしい。
そんなラブ展開とは真逆の決死の攻防がフィールドでは行われていた。
態勢を取り合い、既に地殻を破壊し最後の爆発が誕生しようとしている核なる方へ相手の身体が向くようにコンマ一秒単位での延命による生存をお互いに考えていたからだ。
「あかねぇぇぇぇ!!!」
「ダーリンッ!!!」
「「これで終わりだ(よ)!!!」」
二人の気合いを入れた声を合図に
正真正銘過去最大規模の爆発は数秒かからず、光の速さでフィールド全体を呑み込んだ。
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