第61話 激突 最恐 VS 最強 開戦――『五曲目 ストーリー part1』


 音楽は五曲目に入る。


 ――心が震える相手がやってきた♪


 この世に絶対に勝てない相手はいない。

 自分の心を鼓舞して世界七位に世界から頭が可笑しいゲーマーNO,1の座を先日ネット上で密かに獲得した男は立ち向かう。


 だけど、朱音は槍を二本とも地面に突き刺して、手を胸に当てて口を開いた。


「メールちゃん……ごめんね。来なさい、我が従僕『スノードロップ』起動!」


 懺悔と共に現れた武装は全ての砲塔をメールに向けていた。

 まるで大型のモンスターを殲滅する兵器が如くまだ溶けていない氷が形状を変化させてまるで一つの巨大な要塞都市のように変化していく。氷は一部の炎を強制的に絶対零度の冷気をもってして沈下させる。ただしそれは朱音のMPを全部で六割ほど使うとやはり絶対零度はMPの消耗が激しいらしい。


「これが私の氷武装。通常は攻略難易度が高い大型モンスター用のスキル……最後にモンスター相手に使ったのは討伐率三パーセントって言われている『偽りの天使長』だったかしら。そしてプレイヤーはアリス。気を付けてね、これはダーリンのように地上を一掃する破壊力はないけど強者に対してもかなり有効な私の召喚獣みたいなものだから」


 ニコッと微笑む朱音にゾッとした紅はすぐに叫んだ。


 ―― ~♪ 短い命を無駄にしないために懸命に咲く華たち♪


「俺様影分身の術! ブルー、イエロー! 緊急招集からの俺様最終形態になってメールを護れ!!!」


 目視できるだけで氷の機関銃二十七機。

 同じく氷でできた三連装砲の巨大な主砲が五つある。

 弾丸は全て絶対零度から生成される弾丸と使用者のMPが尽きない限り事実上無限の弾薬を持っている。

 対して神災狐となったブルーとイエローがエリカ特性の神災狐装備を纏ってメールの前に壁になるようにして並んで各々の銃口を朱音へ向ける。

 ただし狐であることを忘れたのか二本足で立っていて観客席からは、


「なぜ立ってるのだぁ!?」


「WHAT!? 日本の狐は二本足で歩くのか?!」


「理解不能……」


「なんでその姿でも武装してんだぁあああああああ!!!」


「賭けるほうミスったああああ!!! 俺の人生があああああ」


「エリカだな? エリカだろ! アイツの形態変化の度に専用のNew装備を作っているのは!!!」


「んんんっ!? 要塞戦開始だとぉ!? だが化物と化物級の要塞だあ!? どっちも応援できるかぁああああああああ!!! お前ら人を超えて世界に負荷が掛かることばかりするな! 他の試合に影響出たらどうするんだぁ! てかもう出てるけどな! 待ちぼうけ食らわされる身にもなれやぁ!」


 などなど、多くの者を驚かせていた。

 当然運営の配慮により、本来なら始まっているはずの試合はまだ始まっていない。

 途中で危機感を覚えた運営は全てのパフォーマンスをこの試合で使うことに路線を切り替えておりサーバー負荷に対する先手は既にうたれていた。

 それによりこの程度ならまだ余力はある。と某責任は密かに呟く。


 ―― ~♪ 誰のために咲き 誰の為に散る それを決めるのは紛れもないmy soul♪


 九本の尻尾に取り付けられた自動追尾式ガトリング砲。

 そして両腕に取り付けられた高性能超電磁砲は従来の物より排熱機能が強化され更なる連射と急速充填による速射を可能としている。悲しいことに戦争(神災狩り)は多くの犠牲と引き換えに文明の進化を早めるようだ。


「お兄ちゃんたち!? だめ! 向こうの方が……」


 こちらも装備者のMPを媒体に弾は作られるため、実質無限の弾丸を持っていた。なぜなら歌こそが紅の動力源だからだ。


 だけどメールから見た戦力差は大きかった。


 ―― ~♪ 大事なのは 命の時間じゃない


「安心しろ。可愛い妹を護る理由なんてお兄ちゃんってだけで充分だろ?」


 ―― ~♪ 散り急がないで 祈るようにその時を待って♪ 


「それにそれ、まだ未完成だろ。限界まで大きくしてぶち込んでやれ。そのための時間ぐらい俺たちが作ってやる! 前座は盛大にしてこそ前座だからな!」


 後ろを振り向かずに背中越しに語るブルーとイエローはたくましかった。

 いつものことだが本体を真似ているはずなのに分身特にブルーとイエローの方がたくましく見えるのはなぜだろうか……永遠の疑問である。


「ありがとう。地上がもっともっと熱くなったタイミングで落下させるからそれまで私を護って!」


「「おう!!!」」


「お兄ちゃんは最も安全な私の後ろに来て! 多分ここらへん一体消し飛ぶから」


「え……っ!?」


 本体となるレッドが予想していた以上の答えに驚きながら急いで身を隠す紅。

 思考が追いつかない状況下なのに、なぜかさっきから歌だけは止まらない。

 それは――。

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