柴犬
口羽龍
柴犬
昼下がり、黒い服の男、敦也(あつや)が周りをきょきょろしている。明らかに様子がおかしい。ここは閑静な住宅街だ。朝はあれだけ人気があったのに、全くいない。
敦也はこの辺りで空き巣をしている男だ。なかなか就職できずに、金に困っているからだ。何とかしてお金を集めなければ生きられない。敦也は必死だった。
敦也は一軒の家を見つけた。鈴木さんの家だ。見るからに、誰もいないようだ。よし、今日はここにしよう。
敦也は鈴木さん家に入った。家には誰もいないようだ。早く通帳を見つけて、お金を盗らないと。
「誰もいないな」
敦也はリビングに入った。電気は消えていて、暗い。通帳はどこにあるんだろう。敦也は辺りを見渡した。
敦也はリビングの棚を探した。通帳はだいたいここに入っている事が多い。
敦也は引き出しに手を入れて、探した。1分も経たないうちに、通帳を見つけた。
「まんまと盗めたぜ」
敦也はすぐに家を出た。早く出ないと、怪しまれる。辺りには誰もいない。気を付けないと。
「よっしゃー、今夜は飲むぞー!」
敦也は堂々と道を歩いている。誰も歩いておらず、家にいる人はそれに気づかない。だが、その様子を、鈴木さんの飼い犬、柴犬のチビが見ている。
数十分後、鈴木真菜子(まなこ)が帰ってきた。買い物に行っていたようだ。買い物袋には今夜の晩ごはんの材料が入っている。今日はカレーのようで、カレーのルーも入っている。
「はぁ・・・」
真菜子はリビングでぐったりしている。疲れているけど、家のために頑張らないと。
真菜子はテレビをつけた。テレビではワイドショーがやっている。真菜子は買い物帰りにワイドショーを見るのが日課だ。
ふと、真菜子は引き出しが気になった。引き出しが開いている。いつも閉じているはずなのに。
真菜子は気になって引き出しの中を見た。すると、通帳がなくなっている。まさか、空き巣だろうか?
「あれっ、キャッシュカードは?」
真菜子は辺りを探した。だが、見つからない。やはり、空き巣が盗んだんだろうか?
「まさか、盗まれた?」
真菜子は頭を抱えた。早く警察に言わないと。
その頃、鈴木の隣に住んでいる米田さんの奥さんが、不思議そうに犬を見ている。その犬は、鈴木さん家が飼っている柴犬のチビだ。
「あれっ、鈴木さん家のチビちゃん、どこに行くのかな? ついて行こう」
チビがどこかへ向かっていく。明らかに怪しい。散歩以外は家にいる事が多いのに。何だろう。追いかけてみよう。
追いかけていくうちに、1人の男を追いかけているようだ。その男は服が黒い。明らかに怪しい。
「あの男がどうしたのかな?」
と、男が何かを取り出した。通帳だ。どうして通帳を外で出しているんだろう。おかしいな。普通は外で出さないのに。
「何だろう、この通帳は」
米田は通帳をよく見た。すると、『鈴木真菜子』と書かれている。まさか、盗んだんだろうか? ならば、早く通報しないと。
「鈴木真菜子・・・。鈴木さんの?」
その声を聞いて、敦也は振り向いた。そこには女がいる。見られたかもしれない。口封じに殺さねば。
「おい! 何見てるんだ!」
敦也は包丁を取り出した。米田は驚いた。殺されてしまうかもしれない。だが、後ろからチビが噛みついた。まるで空き巣をしたと知っているかのようだ。
「いててっ・・・」
敦也は痛がった。だが、チビはやめようとしない。まるで強盗を許さないと思っているようだ。
「あなた、泥棒ね!」
敦也は驚いた。そこには真菜子がいる。真菜子もチビを追いかけてここまでやって来たようだ。
「えっ、えっ・・・」
敦也は戸惑っている。2人も来るとは。これは逃げられないだろう。
「警察呼ぶわよ!」
「す、すいません・・・」
敦也は土下座した。だが、2人は聞き入れようとしない。すでに米田は警察に電話をしている。
「チビが追いかけたから簡単に見つかったのよ!」
「チビ、お手柄ね」
真菜子はチビの頭を撫でた。これからも仲よくしようね。
柴犬 口羽龍 @ryo_kuchiba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます