第8話 蠍の星と契約しよう!


 南天の

 さそりよもしなれ(汝) 魔ものならば

 のちに血はとれまずは力欲し



 南の空のさそり座よ、もしおまえが魔物なのなら、あとで血はとっていいから、まず力をくれ!

 ……まあ青春っぽい「あとさき考えなさ」といえばそうだけど、自分の血を与えて魔物と契約する、しかも契約を急いでいる、っていうんだから、やっぱヤバいよね。

 後の「銀河鉄道の夜」での清冽せいれつな「さそりの火」とはまったく印象が違うのが興味深いところです。でも、このころからさそり座のアンタレスの赤い光に深い印象を抱いていたというのも、また興味深いところです。

 「さそり座のアンタレス」に魔的なものを感じてしまうのは私たちもいっしょのようで、「アンタレスの近くからニュートリノが検出された。X線も検出された。超新星爆発の前兆か?」というニュースが世界を駆けめぐったこともあります。最初から「アンタレスには近いけれど、違う方向」とわかっていたのに、人びとは色めき立ったのです。結果的に、アンタレスと、超新星ではないニュートリノの発生源と、X線源がたまたま同じ方向だったとわかったわけですが、それが結びつけられたのですね。

 この歌に限らず、若い賢治は星の光に敏感なようです。

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