第4*

 私の前を去る者は多い。


「――やってしまった」


 本日より出勤である部下が、開始十分もしない内に去っていった。

 仕事に対しての態度ではなく、目上の者に対しての態度でもない事実をどう言えば良かったのか。考えを巡らせるが、答えは出ぬ。

 私は間違った事を言っていない。


「言い方が悪いのか? それとも厳しすぎる……いや、そもそも来る者達皆、強さがいつも足りないと私は感じる。――そう、やる気が足りない、たるんどる」


 部下への指導は上司の仕事であり、責任でもある。指導を甘くするつもりは無い。それが私のやり方であり、そうでなければ務まらぬと自負している。

 だが、そうだとしても、部下が去っていくのは何回目だろうか。


 以前採用した部下の事を色々と思い出す。最初は「名誉ある仕事に着けて光栄です! 頑張ります」と、皆口を揃えて言うのだが、いざ仕事が始まると仕事内容や私の指導が厳しいのか、三ヶ月……酷い時には一週間経たずに辞めていく。

「私の指導が悪いのか」と、友の前で涙ぐみながら酒を飲み、話をする程私は気にしているのだ。


 だが、私にも守るべき民、背負うべき国がある。生半可な気持ちで民の安全、国の治安は守れぬ。

 譲れぬ正義、譲れぬ思い。

 あらたとみことにも、譲れぬ思いがある事は承知している。

 奴らは今までの者達とは違いがある様に感じる。それは緊張感の無さ、そして自分を偽らぬ素直さだ。

 私の顔色ばかり窺う必要はない事、意見があればはっきりと伝える事が奴らは出来ている。そこは評価出来ると私は感じている。


 奴らが問題児な事も頭には入っていたが、出勤一日目から発揮されてしまうとは思案していなかった。


「一日目……そうか。まだ一日目か」


 採用しては皆辞めていく事が連続して起こった為、私は焦っていた様だ。

 これからでも遅くはない、諦めなければ奴らをより理解する事は可能なはずだ。

 気持ちを新たにし席を立ったその瞬間、聞きなれた警報音が耳に入ってきた。


「悪魔か……さて、出動するとしよう」


 国民に被害が出る前に迅速に対処し、国の安全を守ってみせようぞ。

 私は足早に自室を後にした。

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