第4話 別の銀河からのお客さん
「エントロピーって循環システムが完璧な惑星でも増え続けるんやろか?」
同志社大学法学部のモトヤマ君はおにぎり君の質問を少し考えました。
「うーん。僕は理系じゃないからね。でも宇宙は膨張し続けてるんだし、エントロピーなんて問題にならないんじゃないの。うーん。でもいつかは膨張も止まるかぁ。エントロピーねぇ。何でそんなこと考えるようになったのおにぎり君? 宇宙が仮に熱的死を迎えるとしても、気の遠くなるような先だよ。その前にこの地球が終わってるだろうし、その前にとっくに僕は死んでるよ」
おにぎり君は空を見上げました。
「僕は今のこの宇宙の果てが見える。僕には責任がある」
「よく分からないよおにぎり君。この宇宙の果てってどうなってるの?」
「その質問に答えていいものかも分からない。僕は、僕は、何者なんや。神様のようなことをしても良いものか」
モトヤマ君はおにぎり君にもらったおにぎり2個目を食べました。もぐもぐ。
「ねぇ、おにぎり君。君が普通じゃないのは君のおにぎりだけでも分かるよ。この世界のおにぎりじゃないってのはすぐ分かるんだ。だから天使か何かじゃないのかなおにぎり君は」
おにぎり君は目をぱちくりさせました。
「できるだけ普通のおにぎりにしたつもりなんやけどな」
「だとは思うけど、普通じゃないよ。僕はおにぎりが好きで専門店のおにぎりもコンビニのおにぎりも沢山食べてきた。おにぎりってのはね、おにぎりだけじゃないか、ポテトチップスやラーメン、カレー、いちごのショートケーキ、色々な食べ物がもうゴールまでたどり着いたと思うんだ。細かい違いだけで、もう味の大きなパターンは出尽くしてるよね。パターンが出尽くしたは音楽でも小説でも服のデザインでも言われてるだろうけど。えっとね、だから言いたいのは、おにぎり君のおにぎりはパターンの中にある味じゃないんだよ」
おにぎり君は少し考えました。
「ルイヴィトンと画家の草間彌生さんのコラボバッグを見たんやけど、新しかったよ。カボチャの」
「ルイヴィトンのペイントバッグで検索してごらんよ、出尽くしたパターンって言葉が少しは分かるよ」
「それは言い過ぎやないかな」
「そうだね、少しオーバーだね。でもルイヴィトン外部の人間がそのカボチャペイントバッグのアイデアを出してもすごくも何ともなくないかい? 僕が言いたいのは、詳しい人がハッとするような新しい物はもうほとんどないってことさ。新しいアイデアの天才出現、みたいな。いや、カボチャのルイヴィトンは彼女へのプレゼントにしたいぐらいに良いと思うよ」
おにぎり君はスマートフォンを取り出した。
「iPhoneの出現は携帯電話の世界を変えた。ジョブズは天才だった。世界は新しいジョブズを待っている。しかしそんな出来事はほとんどない。ジョブズにしたって、マッキントッシュはトロンを参考にしたと言われる。アップル社だってそう考えると」
「うん、そうだね。えっとね、つまり、おにぎり君のおにぎりはiPhoneだってことさ。おにぎりなんて昔からある物に新しい風を起こせる。それは僕はiPhoneよりすごいと思うよ。だから、おにぎり君のおにぎりには、全知を感じるんだ。おにぎり君は天使で、神様の子供じゃないかな。ほら、僕の爪」
モトヤマ君の爪は鉄分と亜鉛不足により、最近は真ん中が凹んでいた。それが治っている。
「治ったな、良かった。そう言う状態になると、足の爪が剥がれやすくなってることが多い。鉄分や亜鉛不足が原因やねん」
「このわずかな時間で、おにぎりから鉄分と亜鉛が爪に供給されたってことだろ。味だけじゃなくて栄養も全知の食べ物だよ。おにぎり君は今、」
ひゅううん。
おにぎり君とモトヤマ君の近くに謎の存在が現れた。
テレポーテーションだった。
「おにぎり君、いつまで地球人と話しているのですか? この者達は私から言わせれば微生物ですよ」
「微生物?」
「微生物って何だよおい! あんたも天使か? 悪魔王サタンか? 何者だ?」
「モトヤマ君、君が私の正体を知る必要はない。まぁいい、おにぎり君、地球人との話しが終わったら、ソンブレロ銀河に来てください。新しい王よ、待っています」
謎の存在はまたテレポーテーションした。
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