理由「雨乃八重」
私は昔から不幸体質で、なぜかよく誘拐されたり、悪い人に追いかけられるし、襲われそうになる。
その度に幼なじみであり今や彼氏の関宮裄仁には迷惑ばかりかけている。
そんな裄仁くんが大学に入って、怪しそうな異能研究部に入ると言い出した時は驚いた。
それでも彼と同じサークルならと思い私も入ることにした。
テンションの高いカノンちゃんと、クールな優先輩に、大好きな頼れる幼なじみの裄仁くん。
活動内容は能力者を追うなんて意味のわからない活動だけど。
そんなサークル活動が、大好きだ。
そんな不幸体質の私が走る理由と言えば、一つしかない。
「はあ、はあ、なんで」
なんでまた私は追われているの!?
何故か怖い顔をした人たちに追われている。
今日は彼氏のサプライズでプレゼントを買いに来ただけなのに。
「うそ……行き止まり」
たまたま来たそこは行き止まり。
男は笑う。
どうして私はこうも、不幸なのか。
「かわいい女の子を寄ってたかってイジメ?良くないよ、そういうの」
そこに現れた男の人。
「て、てめぇは、騎士団のーー」
「後輩の任務なんだけど、まあいいか」
男の人は青いマントみたいなものをはためかせながらひらりと怖い人たちを倒し、どこかに電話をする。
「一応捕えたんで回収お願いしまーす、動けないから投げとくね」
男の人と目が合う。
「もう大丈夫だよ、お嬢さん」
綺麗な薄い茶色の髪の毛に赤いメッシュ。見るからにお兄さん、と言った印象を抱いた。
「あ、えと……ありがとうございます」
「……ふーん、そういう事ね」
オレンジ色だか、茶色だか、そんな感じの色合いの瞳は私をじっと見つめ、何かを納得したように頷いた。
騎士団の、と言いかけていたがカノンちゃんが血眼になりながら探す能力者なのだろうか。
「八重!」
「裄仁くん!?」
そこに現れたのは彼氏である関宮裄仁。
「何かあったのか!?大丈夫か!?」
「う、うん、そこのお兄さんが……あれ?」
助けたお兄さんは気がつけばいなくなっていた。
お礼を言えなかった。
「と、とりあえず警察を呼ぶべきか?」
「ううん、大丈夫と思う。お兄さん、捕らえたから回収とか言ってたし……」
怖い人達は何故か痺れているみたいに見えるけど、今どきのニホンでまさかそんなはずないよね?
「ねえ、裄仁くん。騎士団って、一般人でも行けるのかな?」
「騎士団?」
「うん、さっき助けてくれたお兄さんが騎士団とか言ってて……」
「気にしなくていいだろ、ほら、帰ろう?」
裄仁くんは不思議と私が騎士団に興味があるのを嫌そうにしていた。
そんなに怖いところなのかな?
今度カノンちゃんが困っていたら言ってみようかな。うちのサークル、いつも廃部寸前だし。
そんな今度、はすぐやってきた。
「えええええ!?」
本当に綺麗に「え」を連呼するカノンちゃん。
「騎士団の人間に助けられた!?八重、どうしてすぐさま連絡先聞かなかったの!?!?」
カノンちゃんは私を凄い勢いで揺さぶる。
因みに今日は裄仁くんは用事があるらしくてお留守。そこでカノンちゃんが困っていたから話した次第だ。
「……カノン、離してやれ」
優先輩はため息をついた。
「そういうことって言うのも気になるわね!お礼に行きましょう!八重!彼氏がいないうちに!優も行くわよ!」
「えっ!?裄仁くん怒らないかな!?」
「絶対に怒るだろうな、あいつは……騎士団の有力な情報があるだけいいだろう?あいつも何か思いがあるのだろう、八重を騎士団に連れて行きたくない理由が」
裄仁くん、何かあったのかな?
でも、助けてもらってありがとうも無しはまずいし……どこの誰かも分からない。
「だが、このサークルでの活動理由が裄仁以外に出来たのは良かったな。その能力者の人間が誰なのか、探せばいい。幸いにもうちは能力者の追っかけがいるし、すぐに会えるだろう」
「追っかけって何よ!?異能研究部だから当然でしょう!?」
優先輩、私が裄仁くんについて入ったの知っていたんだ……
でも確かに、ここでお兄さんが危なくない人ってわかればきっと裄仁くんも心配しなくていいだろうし、お礼も言える。いいことかも。
「まあ、有力情報が入ったのはいいことね!褒めてあげるわ!今月の活動記録にも困らないし!」
「……えっ、これ活動記録にするの?」
「当然よ!ネタなんていつもないんだから!」
優先輩はまた深いため息をついた。
カノンちゃんはこうなったら止まらない。諦めて私は体験をレポートにすることを決めた。
カノンちゃんって言ってるけど、先輩なんだよな……
以下、異能.comより。
>>雷の能力者って、目撃情報ある?
>>え?騎士団の雷霆?
>>最強らしいじゃん。大佐でしょ?行けば会えるんじゃない?
>>名前は、確かーー
画面の前で頭を抱える青年。
雷霆。最強の能力者。彼がもし八重を助けたとすればーー
「気づいてるよな、八重の事には……」
どうする。
八重には能力者である事実を知られたくない。
しかし彼女の事だ、止めてもいつかはお礼を言うために再会をしてしまう。
「俺一人で大佐の口封じ?どうしたらいいんだよ……」
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