エピローグ
件のダンジョンは専門の調査隊が後は調査するということになった。
報酬を受け取った後、その夜はダンジョンから全員生還したということで、その日は宴が開かれた。確かその時、「子供は酒を飲んではいけない」とか言われてアミアルが怒ってたっけ。
そしてその次の日、一応仕事は休みを出されたけど、僕達はミルカに呼ばれていた。
「今日お呼びしたのは、貴方達に伝えることがあるからです」
「「伝えること?」」
僕とアミアルが同時に訊き返す。するとミルカは「はい」と頷き、表情を改めると、
「この度、ギルドへの貢献ありがとうございました。その活躍を元に、貴方達の階級を上げさせて頂こうと思います」
ミルカの言葉で、僕達の頭の上にははてなマークが増えた。
「階級? そんなのあったっけ?」
「パスポートに書いてありましたよ……」
ついさっきまで真剣な表情だったミルカも苦笑いをしてしまっている。
「……わかりました。私から説明します。このギルドはメンバーの活躍度合いによって階級が上がっていきます」
ミルカの説明は続く。
「階級は星によって分けられ、階級が上がるごとに星が増えていきます。今ゼイラン様は十個で、アンテルイ様は十八個です」
いや、具体的な個数を言われてもわかんないよ……まあつまりゼイランとアンテルイがすごい、ってことは分かるけどさ……
「星を一つ得るのにどれくらいかかるの?」
「そうですね……その人の活躍度合いによりますが、平均して二ヶ月程ではないでしょうか」
二ヶ月……普通の人はそんなにかかるんだ……そんなものを、初めてから数日も経ってない僕達が受け取ってしまっても良いのかな……
「『記録』によりますと、貴方達の活躍は星2つ分に相当するようです」
「「え!? 二つ!?」」
普通の人が四ヶ月かかるような偉業を僕達が成し遂げた、とでも言うの!?
「いいや、申し訳ないよ……」
「いいんです。これは活躍に対するお礼も含めていますが、メンバーへの期待の意味もこもっているのです。お受け取りください」
「……うん、わかったよ」
僕がそう返すと、ミルカはにこりと微笑んだ。
「星はパスポートに押す形でつけます。ではお二方、パスポートをお出しください」
僕達がパスポートをカウンターの上に置く。ミルカはその中のページの一つに星型の判子を二つずつ押した。
「あの、一つ気になったんだが」
珍しくアミアルが口を挟んだ。
「どうしたの? アミアル」
「さっきミルカが言っていた『記録』のことだが」
ああ、確かそんなこと言っていたね。
……あれ? 『記録』?
「その『記録』はいつ取っていたんだ?」
「『記録』は例外を除いて基本メンバーには分からないようにして取っています。……例外を除いて」
なんだかミルカが「例外を除いて」を強調してる……何かあるのかな?
「貴方達がその例外なのですよ……」
「僕達が例外?」
一体どういうことなんだろう、 僕達もこれを言われるまで『記録』のことなんて知らなかったし……
「『記録』係から手紙が来ております」
と、僕達はミルカから手紙を受け取った。便箋を開けて、文章を見ると……
『こんにちは、メニアです。この手紙の内容はミルカさんにも内緒なので、絶対に言わないでくださいね!
さて、本題ですけど、まず私が貴方達に嘘をついてたこと、黙っててごめんなさい! 今までのこと全部知ってました! なんならダンジョンに入っていた頃から一緒にいました! 仕事上仕方なかったんですよ……
そして二つ目、そんな私ですが、『記録』係として貴方達をしっかりと見させていただきました。正直言いますと、とてもかっこよかったです。ウェルズさんのスリッパはちょっと意味わかんなかったですけどね……
でも、嘘つきの私を仲間として受け入れてくれて、ピンチだった時に守ってくれた。それが本当に嬉しかったです。ミラルザ、っていう魔物と戦っていた時、実はちょっと怖かったんですよ。不思議ですよね、『記録』係としてやってきていたというのに。でも、貴方達がいると何故か安心できたんです。
というわけで、嘘ついちゃってたことのお詫びも込みで、星を二つあげちゃいます! これからも頑張ってくださいね!
P.S いつか時間があったらお昼ご飯を食べにでも行きましょう!
メニア』
「「………」」
「どうかされましたか?」
僕達が色んな感情が混ざりあった状態で手紙を読んでいると、ミルカが心配そうに尋ねてきた。
「ああ、いや、大丈夫です」
「そうでしたか。 私もその手紙の内容を知らなかったものなので。ですが、本人が『読むな』と言っていたのでこれ以上の詮索はやめておきましょう。その手紙はどうしますか?」
「うーん、じゃあ僕達が持っておくよ。ありがとう!」
「はい! ではまたお越しください」
ミルカの見送りで僕達はギルドの建物を出た。
「まさかメニアが『記録』係だったとはね……」
宿に帰る道のり、僕達はメニアについて話していた。
「私も驚きだよ。全く分からなかった」
「でも……面白い人だったね」
「ああ。また会えるといいな」
「そうだね」
いつか昼ごはんの予定でも立てようかな、と考えながら僕達は宿に戻るのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて第一章は完結となります! ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!
♡応援、☆レビューを頂けると励みになります!
今後第二章に続きます。ウェルズ君達の冒険をこれからもよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます