第10話 木乃伊取りが木乃伊になる

 宣託市内某所。街で人々が倒れていた。鮫瓦は影里に指示して、倒れた人々の救助していった。

「何があったんだ、一体。」

次郎丸は考え込んで、言った。

「これは超音波だな。」

「何か考えてると思えば、推理か。さすが探偵だ。」

「まあな。刑事は周囲の警戒を怠るな。」

「ああ。言われなくてもやるよ。」

険悪なムードを察して、岡島流人が言った。

「あの、どうして超音波と考えたんですか?」

「倒れた人の中に耳を抑えた人がいる。あと、超音波の届く20m程度の範囲で倒れている。推理に過ぎないが。」

「なるほど。」

影里が救助を終え、戻ってきた。

「救助隊に連絡したので、あとは彼らに任せます。」

「ご苦労。被害はどれくらいだ?」

「結構少ないです。犯人はまだ遠くには行ってないようです。彼女、いや、ツーが感じ取ったそうです。」

「たぶん犯人はあそこで見てるひと。」

全員が見た時、岡島流人は驚いた。

「あの人は僕の同僚の蛙山さんだ。」

蛙山はどこかを見た。すると、驚き、その方へ走って行った。全員が追いかけた。

「オカルト。犯人と知り合いというのは本当か。」

「はい。」

ビルの脇の階段を駆け上がると、ビル内の廊下で蛙山が倒れた人に呼びかけていた。

「蛇川!どうしたんだよ〜」

「蛙山…気をつけろ。あいつ、本気だ。」

「蛇川!は!」

蛙山が蛇川を引っ張り、移動させると、さっきいた場所が黒い球体で消滅した。蛙山は恐怖の表情で走って逃げた。次郎丸は考え込んだ。

「何が起きてる。至る所、植物の枝が伸びている。こんなビルに植物が生えるのは不自然だ。おそらくこれも」

「霊の力。」

「そうだ。ツー。出所はその男か。」

畑神が蛇川のいる場所に手を伸ばした。

「間違いない。」

「すると、彼らの会話とこの状況から考えて、何かと争っていたと推測できる。」

「ツワモノ。それは黒い球体を放った奴で合ってるか?」

「ツヨイヒト。合ってる。」

「それじゃあ、すぐ近くにいるんじゃないですか⁉︎」

「ツムジカゼ。その通りだ。ツー。特定できるか。」

「あそこ。」

「よし。向かうぞ。」

畑神が指差した向かいのビルの屋上に全員向かった。その途中、黒い球体が襲った。鮫瓦と影里が銃を撃った。

「だめだ!効かねえ!」

「危ない!」

「うわあ!」

全員倒れて何とか避けた。

「くそ!どうすればいいんだ!」

「この間の力は使えませんか!?」

「そうか!」

その時、黒い球体が襲った。

「ツムジカゼ!」

「はい!鮫瓦さん、いや、ツヨイヒト!」

鮫瓦と影里から放たれた竜巻で黒い球体がずれた。

「よくやった!ツムジカゼ。」

「はい。ツヨイヒト…。」

屋上に着くと、二人の男がいた。岡島流人が言った。

「蛙山さんと、もう1人はやっぱり、滑梶さんでしたか。いつも3人仲良さそうなのになぜ?」

「参ったな。オカルトが次の敵か。」

「何を言ってるんですか?」

「この力に目覚めた時、滅ぼさなくてはならない欲求に駆られた。だから、近い者から襲った。」

「でも、仲良しに見えたのに、辛くないですか?」

「辛い。だからこそ、早く終わらせる!蛙山、仲間になったならやれ!」

「うん。」

蛙山が放った超音波で全員苦痛になった。

「う、やめてくれ、苦しい…」

「いいぞ。トドメは俺がやる。」

「滑梶。蛇川は助けようとしてた。」

「うるせえ!あいつも同じだ。きっとそう言って俺を襲おうとしたに違いない!」

「信じてくれよ!」

「…お前も同じだ!結局、誰も信じられない!お前らも部長も!」

岡島流人は耳を疑った。

「部長?」

「こうなったら、皆纏めてあの世行きだ!」

黒い球体に力を込める滑梶に、異変が起きた。

「あ、あああ!!」

黒い球体が制御不能になり、滑梶と蛙山を飲み込んだ。さらに、黒い球体は大きくなり、周囲をのみこみ始めた。

「危険だ。一時撤退だ。」

「鮫瓦さん、いや、ツヨイヒト、オカルトが間に合いません!」

その時、次郎丸が岡島流人を庇い、黒い球体に飲み込まれた。

「みんなを逃がせ…」

「ツワモノ!みんな、安全は保証するから、飛び降りろ!」

全員浮遊しながらゆっくりと着地した。

「何とか助かった。でも…」

「オカルト!落ち込んでいる場合じゃない!周りを見ろ。」

「これは!」

街中に黒い球体が出現していた。

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