第9話 災いを転じて福となす2

 宣託市内某所。又探偵事務所が爆発したというニュースが速報で流れていた。岡島流人は会社のテレビでそれを見た。

「うわあ。最近、物騒なニュース多いですね。」

岡島流人は先輩社員の又三郎に言った。

「・・・大変だ。早く行かなきゃ。」

走り出した又三郎に岡島流人は問いかけた。

「急にどうしたんですか?」

「あそこは親父の事務所だ。無事かどうかこの目で確かめに行く。悪いけど、急ぎの件頼む。」

又三郎は早退した。業務終了後、岡島流人は人通りのない公園に行った。そこに畑神がいた。

「ふう。すっきりした。あ、いた。おーい、ツー。」

「オカルト。大声で呼ばなくても分かるわ。」

「ああ、ごめん。それより、大変なんだ。」

「知ってる。かなり強い2つの霊が蘇ったみたい。」

「そうなんだ。とにかく、僕らも行こう。」

「行くってどうやって?」

「ルートの力を借りる。頼んだ。」

(オ任セアレ。)岡島流人と畑神は線状に分かれ、消えた。二人は瞬時に移動した遥か上空で、線状のまま現れた。

「へえ。すごいのね。」

「そうだろう。」

(帥ハ何モシトランゾ。)

「そうだった。ところで、あの2人が今回の?」

「そう。」

そこに、睨み合う次郎丸と鮫瓦がいた。

「ここで終わりだ。」

「それは私の台詞。」

次郎丸と鮫瓦はとてつもない力を込め始めた。

「まずい。手出しできないわ。」

「2人の力は互角に見える。上手くいけば、2人がぶつかった後、助けられるかも。」

「「うりゃああ!!」」

次郎丸と鮫瓦が激しく交わり、落下した。

「危ない。ヒトヨナキ。頼んだ。」

(ガッテンショウチノ介。)

次郎丸と鮫瓦は浮遊して静かに空き地に降りた。

「ここは?見かけない場所。」

「おや?見かけない人物。」

「お2人が戦闘の末、落下したのです。僕は、心霊現象を追う会社員オカルトと申します。それから、彼女は僕の助手ツーです。」

「初めまして。」

「ほう。助手とは羨ましい。」

「そうか。君がオカルト君か。そういや、部下の影里は無事か?」

「影里というと、バナナ好きの刑事ですね。」

「ああ。だが、何故その事を知っている?」

「僕はあなたがたを陰で見ていました。いずれ来る悪い侵略者と共に戦う仲間として。」

その時、とてつもない衝撃を生み出しながら、新たな二人が睨み合っていた。

「あれは!影里!」

「まさか。もう1人は、三郎。どうして?」

「先輩はあなたの無事を確認しに会社を早退して向かいました。あなたの代わりになったのかも。」

「霊は波長の合う者に憑りつく。次に憑りつくなら最初の2人に近いあの2人ね。」

「どうすればいいんだ!?」

「三郎。私なんかのために。く、こんな時、私は何もできない。」

荒々しくぶつかり合う三郎と影里は、空き地に着地した。二人は言い争っていた。

「強いのは親父だ!」

「いいえ!鮫瓦さんだ!」

二人が渾身の一撃を放とうとした時、間に次郎丸と鮫瓦が割って入った。

「やめるんだ。2人とも。」

「強いのが探偵か俺かなんてどうでもいい。」

三郎と影里は躊躇した。岡島流人は畑神に言った。

「今だ。ツー。頼んだ。」

「わかった。」

畑神の目が光り、三郎と影里は動けなくなった。鮫瓦が塩の弾が入った銃を撃った。当たって砕けた塩を被り、三郎と影里は意識を取り戻した。

「あれ?父さん、無事で何より。」

「気づいたか。迷惑かけた。」

「鮫瓦さん、又さんと上手くやってくださいよ。」

「分かった。探偵さんよ、協力してくれるか?」

「仕方ない。こんな事件、見過ごしておけないからね。」

その後、鮫瓦と影里は上司に報告した。

「えー、色々ありましたが、又探偵に協力を要請して、承諾を得ました。」

「そうか。ここに集まった君たちが協力者だね?」

そこにいた又次郎丸、岡島流人、畑神が頷いた。

「うん。勢揃いだ。ここは警察でも極秘の組織〈心霊現象対策部〉だ。以前は名ばかりだったが、ここ最近反応が活発で急遽集まったんだ。」

「あの、人数が増えたことと極秘チームであることから、岡島から提案があるそうなのですが。」

「聞こう。」

「すみません。僕たちは仲間同士だけの名前があります。皆さんもどうでしょうか?」

「いいね。名づけてくれ。」

「では、上司の方は5人目なので、ルート5=2.2360679775・・・(フジサンロクニオウムナク)で、フジサンではどうでしょうか?」

「気に入った。何せ私は藤宮というんだ。」

「では、鮫瓦さんは6人目なので、ルート6=2.44948974・・・で、ツヨイヒトではどうでしょうか?」

「まあ、いいだろう。」

「では、影里さんは7人目なので、ルート7=2.64575131・・・で、ツムジカゼではどうでしょか?」

「カッコイイね。」

「では、次郎丸さんは8人目なので、ルート8=2.82842712・・・で、ツワモノではどうしょうか?」

「ありがとう。いい名だ。」

「気に入って頂けたら幸いです。ちなみに、僕はオカルト。そして、僕の中に、ルート、ヒトヨナキ、ヒトナミダがいます。」

「わたしは、ツーです。」

「ところで、どうしてオカルトは心霊現象を追うようになったんだ?」

「僕は色んな場所でトイレに行くのですが、ある時、異変を感じて、それが1人目の仲間ルートでした。ルートの力で、近い未来に意識が移動した時、被害を受けた地球を見ました。そこで、誰かに話しかけられ、これは悪い侵略者によるもので僕だけがこの危機を救えると言われました。それから、今に至ります。」

「なるほど。悪い侵略者か。我々が会うのも近いかもしれないな。」

「取り込み中すみません。至急出動要請です。」

「オカルト。ルート。ヒトヨナキ。ヒトナミダ。ツー。ツヨイヒト。ツムジカゼ。ツワモノ。新たな反応に向かってくれ。」

鮫瓦と影里が敬礼し、他の者は真似した。そして、全員出動した。

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