第7話 焼け石に水2

 宣託市内某所。少年がうなされていた。

「う、うわーーー!!」

団地の中の少年の住む部屋からとてつもない光が発せられた。その後、とてつもない炎とともに少年が飛び出した。火が燃え移りそうな状況を見て、慌てた。

「右手から火が出たから、反対に左手を使えば水が出る?」

咄嗟に思いついた事を試すと、とてつもない量の水が出て、火が消えた。

「本当に出た!…これはすごいぞ。」

少年は何かを企むような表情で何かを求めて飛び去った。タバコの火を探す人の所へ来ると、少年は右手で火を差し伸べ、断水した公園で流せず困る人の所へ来ると、少年は左手で水を差し伸べた。

「ありがとう。君は一体?」

「名乗るほどの者ではありません。」

少年は、要領を得たという感じで、人通りのない公園を、飛び去った。少年に助けられた岡島流人は呟いた。

「彼も僕と同じだ。追おう。」

少年の行動はエスカレートした。最終的には、巨大な火の玉で太陽光発電を促進させたり、巨大な水のカーテンでコンクリートによる地熱反射を和らげたりした。街を行き交う人はいつも見かけない光景に注意を向けた。それを見て少年は、自分がまるで神様にでもなったかのように思った。

「はは。みんなが僕を見ている。僕に感謝しているんだ。もっとすごいことをしなきゃ、もっと!」

「そこまでよ。未開くん。」

「!…畑神さん、どうやってここに?ここははるか上空なのに。」

「ある人に協力してもらったの。それより、落ち着いて聞いて。あなたの中に強力な霊が取り憑いてる。そのうち、未開くんは完全に乗っ取られてしまう。そうなる前に、霊を手放してほしいのよ。」

「畑神さん。霊が取り憑いてるから手放す、だって?そんなこと、できないよ。」

「未開くん。信じて。このままだと元に戻れなくなるかもしれないわ。」

「ごめん。僕は、行くよ。」

少年が右手で火を噴射して飛び去る時だった。

「行かせない。」

「どうして、畑神」

「わたしが守るから」

少女の目が白く光り、少年は石化した。少女は石化した少年を抱きかかえて住宅地の道に降りた。そこにいた岡島流人が少女に言った。

「良かったの?友達だったんだよね?」

「彼を止めることが彼の為になるから。それより、あなたの霊すごいのね。礼を言うわ。ありがとう。」

「礼にも及ばない、って言ってるよ。」

「そう。」

「ところで、君はその少年をどうやって石化させたの?」

「わたしの中にいる霊の力。それが対象に麻痺症状を与えて動きを封じるもので、強めれば石化させることができるものよ。」

「そうか。まさか僕以外に霊の力を持つ人がいて、こんな小さい子とは、驚いた。」

「怒るわよ。」

少女の目が光った。

「ごめん、ごめん。大人びてるから。ところで、彼の事はどうして気づいたの?」

「もともとわたしは霊感が強いから、彼の住む団地付近に強い霊の力を感じたの。」

「霊感。それはすごい。僕は今後も君が協力してくれたら頼もしいんだけど、どうかな?」

「いいわ。」

「ありがとう。ちなみに、僕の仲間はみんな決まった名前がある。君も付けていいかな?」

「いいわ。」

「それじゃあ、君は4人目、つまりルート4=2だから、ツーと呼ぶことになる。」

(若イ女子ガ仲間ニナッタカ。オカルト、気ヲ緩ムナカレ。)(ボクチンデ良ケレバイツデモ力ヲ貸スヨ。)(ボクノ分身ノ力モネ。)

「よろしく。」

「いやあ、挨拶が済んだところだし、トイレに行くね。」

「何故?」

(コレハオ決マリナンジャ。)

「じゃ、そういうことで。またね。ツー。」

走る岡島流人の背を見て、畑神は首を傾げた。

「霊は徐々に強まってる。今後もそれは続くわ。」

畑神は呟き、その場を後にした。

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