第5話 灯台下暗し2

 二人の警官、鮫瓦と影里は上司に今までの成果を報告していた。

「ほう。失敗を仕向けたり、反応を分散させたり、一口に心霊現象といっても様々あるようだ。不思議なことに二件とも宣託市内で発生している。知らないだけで他にも心霊現象は起きているかもしれないな。鮫瓦、引き続き、頼んだぞ。影里はしっかり鮫瓦を補助してやれ。」

「はい。」

上司はブラインダーをずらして、外を見た。影里は自席に戻ると、パソコンを立ち上げた。

「新しい反応がないかチェックします。」

「ああ。」

鮫瓦は自席に座り、何もする様子もなく、足を組んだ。数分後、影里が言った。

「反応ありました。」

「どこだ?」

「又探偵事務所です。」

鮫瓦と影里は、探偵事務所を訪れた。

「失礼します。私たちは仕事のために来ております。」

「警察か。」

「おい、影里。反応はこの男からだ。」

「廃工場では世話になったな。」

又次郎丸は、灰皿を取った。しかし、灰皿を掴んだまま動かなくなった。

「くっ、こ奴、何て力で抵抗しやがる。」

その隙に、影里は次郎丸の腕に塩をかけた。

「うがあぁ!我はここまでだ。しかし、我の仲間が敵を取ってくれるはず・・・」

次郎丸が意識を失った。

「影里。囲まれてる。注意しろ。」

「そんな。さっきまで反応は一つだったのに。」

次郎丸が意識を取り戻した。

「そいつは違うぜ。俺の体の中にそいつらが全部入っていたのさ。」

驚く影里。

「安心していい。もう俺の中にはいない。」

鮫瓦が銃を撃った。

「うがあぁ!」

「おい、人の店で発砲するな。」

鮫瓦はキャンデーを取り、言った。

「先に言っておく。店を荒らす。すまない。影里。例のあれ、使え。」

「あれですか。わかりました。」

影里は鞄からバナナを取り出し、皮を剥くと、食べた。すると、影里の様子が変わった。

「僕の腕にかかれば敵の全滅まで10秒。」

二丁の拳銃で撃ちまくる影里。

「うがぁあ!」

あちこちで悲鳴が上がった。

「これで最後だ。」

最後の反応が消えた。

「無事業務終了です。ふう。」

「よくやった。反動が出る前に帰るぞ。」

「おい、人の店を汚しておいて、そのまま帰るのか。」

「仕方ない。影里。片付けるぞ。」

「はい。」

片づけをして、反動が出た影里を担ぎ、鮫瓦は探偵事務所を後にした。

「邪魔して悪かった。」

「もう依頼以外で来るな。」

無言で出た後、鮫瓦は思った。(最後の反応、分散したように見えたが、前のように逃げられたか。また倒すだけだが。)鮫瓦の予想は当たっていたが、その霊は弱虫だった。

「くそ、仲間がみんなやられた。ボクだけでは勝ち目がない。罪を認めてこの世とおさらばだ。」

そこに線状に分かれた状態の岡島流人が現れた。

「君、ちょっと待って。その力、役立ててみないか。」

「でも、ボクに出来るのは、分身くらいですよ。」

「それでいい。さあ、僕の中へ。」

岡島の口から霊は入った。

「君は、ルート3=1.73205080757・・・(ヒトナミニオゴレヤ)で、ヒトナミダと呼ぶよ。」(余ハ、ルート。ヨロシク。)(ボクチンハ、ヒトヨナキ。ヨロシク。)(ボクハ、ヒトナミダ。ヨロシクオ願イシマス。)

「賑やかになって安心した。ちょっとトイレ。」

岡島は人通りのない公園のトイレに駆け込んだ。

「心霊探偵と出会ったか。心霊を追う会社員ともいずれ会うだろう。」

警察署で上司が呟いた。

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