第4話 論より証拠

 宣託市内某所。住民が中庭を見ていた。すると、庭にある植木鉢や置物が浮遊した。驚いて住民は立ち上がり、尻餅をついた。腰を擦りながら、探偵事務所を訪れた。そこにいる私立探偵、又次郎丸が話を聞いた。

「それは奇妙ですね。調べてみましょう。」

次郎丸は、依頼を受けた住民の家の中庭を捜索した。

「どこもおかしな点はないですね。もしかすると、これは心霊現象の可能性があります。もしそうだとすれば、こちらから手出しはできません。また同じ現象が起きるのを待ちましょう。」

それから、次郎丸は日中、依頼を受けた住民の家で見張りを続けた。夜間の見張りは住民に任せ、次の日に報告を受けた。しかし、浮遊することはなかった。

「あれから3日間。全く起きる気配がありませんね。やはり、見張っていてはだめなようです。実はね、私も庭に置物を置いてみたのですよ。夜中に見張りをしていたら、つい居眠りをしてしまいました。目を覚ますと、なんと置物が浮遊していました。どうやらこれは不意を突く時に起きるようです。もう一点、浮遊する物は鉢や置物など磁器のみです。磁器といえば、昔中国が宗の時代に磁州窯で焼かれたことが由来で、磁力はないそうです。すると、磁器でなくても浮遊できそうですが、磁器のみを浮遊させています。おそらく磁器が割れた高い音でより驚かせたいのでしょう。失礼します。」

次郎丸は、置物を一つ持ち上げると、地面に叩きつけた。ぱりん、と高い音が響いた。

「ああ!驚いた!」

「出たな。お前の力では磁器を浮遊させるだけで割ることはできない。人を驚かすのは諦めるんだな。」

「わかったよ。シクシク・・・」

「泣き虫な霊だ。」

会社員、岡島流人は自分の体内にいるルートという霊の力で、泣き虫な霊に声をかけた。

「君、僕と力を合わせればもっと大きいものを浮遊できるよ。」

「本当?どうすればいいの?」

「僕の体の中にいればいい。ほら入って。」

岡島流人は口を開けた。泣き虫な霊は岡島流人の体内に入った。(余ハ、ルートト申ス。ココハ狭イガヨロシク。)(ボクチンハ、仲間ガデキテ嬉シイヨ。)

「君は、2人目だから、ルート2=1.41421356237・・・(ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ)で、ヒトヨナキだ。」

(良イ名前ジャノウ。)(ボクチンハ、ヒトヨナキ。ヨロシクネ。)

「僕はオカルト。心霊現象を追う会社員だ。1人増やせて、安心した。ちょっとトイレ」

岡島流人は人通りのない公園のトイレに駆け込んだ。

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