第2話 猿も木から落ちる

 宣託市内某所。各分野の名人たちが一同に集まっていた。会場には観客が大勢集まっており、警備も厳重だった。そこに、二人の警官が警察手帳を見せ、中に入ってきた。

「ご苦労様です。私たちは中に用がありますので入ります。」

二人のうち若い方の警官が言った。もう一人の警官はサングラスをかけ、口にはペロペロキャンデーを咥えていた。その警官はキャンデーを取り、言った。

「影里。あの白髪の老人だ。」

「はい。鮫瓦さん。」

二人の警官は、皿回しの名人の前で密かに見守った。

「さあさあ、見ていってくだされ。今日は多くのお客様がいなさる。そこで、いつもより多めに回しますぞ。」

皿回し名人は器用に両手を使い、皿を何枚も回した。観客からは大きな拍手が起きた。しかし、その直後、名人はバランスを崩し、皿が落ちてしまった。

「おおっと、こういう時もある。人生は何が起きるか分かりません。気を取り直して、もう一度。」

名人は再び皿回しを始めた。しかし、また名人はバランスを崩し、皿が落ちてしまった。

「これはこれは。やはり年のせいかのう。」

その後も名人はめげずに何度も皿を回した。しかし、同じことの繰り返しだった。ついに、名人が膝を折った。その時、二人の警官は動いた。

「影里。反応が変わった。追うぞ。」

「はい。」

二人の警官が追った先にいたのは、玉回し名人だった。名人は、急に調子を崩し、玉を落とした。

「あれ?さっきまで出来てたのに。もう一回。」

玉回し名人が再び玉回しをしたが、失敗した。

「どうしたんだ。すみません。」

二人の警官はこの時を狙っていた。鮫瓦が塩をまきながら、会場の隅に移動した。

「今だ!影里!」

「はい!」

影里が銃を取り出し、会場の隅に発砲した。その場には塩が散乱した。

「うがあぁ!折角良い獲物がたくさんいたのに・・・」

その後、皿回し名人も、玉回し名人も失敗することはなく、会場は大盛況だった。皿回し名人は探偵事務所を訪れた。

「次郎丸さんの言う通り、諦めずに続けたら成功できました。霊に取り憑かれとるなんていうのはわしの勘違いだったようです。有難うございました。」

「私は何もしていません。成功は名人の力です。」

影里は鮫瓦に言った。

「今回が初めての成功でした。鮫瓦さんの適格なサポートのお陰です。」

鮫瓦はキャンデーを取って言った。

「いや、影里が優秀だった。それだけだ。今後も頼む。」

「はい!」

影里は少し前にいる鮫瓦の方に走った。

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