心霊探偵の事件簿

ソードメニー

第1話 飛んで火にいる夏の虫

 宣託市内某所。住宅が燃えていた。消防隊が消火活動に当たり、近隣住民が様子を見ていた。その中で、茶色のコートを着た男は、帽子を深くしてその場を去った。その男、又次郎丸は私立探偵であり、ある依頼を受けていた。その依頼とは、近頃不審火による火事が数件起きており、しかも火事のあった現場は近所であることから関連性が考えられ、その原因を突き止めてほしいという内容だった。次郎丸は連続する火事を事件と考えていた。しかし、只の事件ではなく、得体の知れないものが原因と睨んでいた。

「この事件、どうもおかしな点がある。確かめなけりゃ分からない。」

次郎丸は、空き地に来た。そこで、光沢のある金属製のキセルを取り出し、ライターで火をつけようとした。するとその時、ライターの火が勢いよく燃え上がった。

「おお。思った通りだ。こいつが犯人か。」

それは、人型をした火の塊だった。

「美味い美味い。もっとよこせぇ!」

「お生憎だが、タダで何個も渡せるほど余裕はねえんだ。」

「嘘だ。匂うぞ。まだ持ってるものをよこせぇ!」

火の塊は次郎丸に近づいた。次郎丸は懐中電灯を取り出し、光を当てた。

「うがあぁ!苦しいぃ!」

「ガスは燃えると光を出す。反対に光を当てればガスは分解するっていう仕組みだ。火の後始末はきちんとしなくちゃならない。」

次郎丸は、キセルを口につけると思い切り吸い込んだ後、勢いよく煙を吐き出した。

「うーん、うまい。」

この後、不審火による火事は収まった。報道では、火の不始末と報じられた。

「あんな奇妙奇天烈なもの、信じてもらえないからな。」

次郎丸は、キセルで煙を吐いた。

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