第6話 再会

「え?」


わたしは息をするのも忘れて目の前の少女を見た。


綺麗な黒髪を風になびかせ、佇んでいる。


幻かと目を擦る。


それでも目の前の少女は香澄ちゃんに

そっくりだった。


「香澄ちゃん……?」


「おい、何言ってんだ、香澄はもう」

匠くんが目の前を見て唖然とする。


「香澄?」


「久しぶり、二人とも」


香澄ちゃんがふわりと笑う。


「本当に、香澄なのか?」

匠くんが香澄ちゃんの頬を触れた。


と、思ったが香澄ちゃんの頬を指が突き抜ける。


「きゃっ」


おもわず小さな悲鳴を上げた。


「あはは、驚かしちゃったね、ごめん。わたし、

幽霊になったみたいなんだ」


信じられなかった。

でもその声は、姿は、たしかに香澄ちゃんで。


「泣かないで、万優花」

香澄ちゃんは悲しげに笑う。


「黙っていなくなってごめんね」


「まったくだよ。なんで死んじまったんだよ」

匠くんの瞳から次から次へと涙が溢れ出る。


「ごめん、匠。

……本当は、わたしもみんなと

一緒に生きていたかった。

みんなと笑い合っていたかったよ。


わたしね、心残りがあるの」


香澄ちゃんはチラリとわたしを見る。


「万優花、匠くんを幸せにしてあげて」


その言葉に息を呑む。


「まさか、香澄ちゃん……」


わたしが匠くんのこと好きだって知ってたの?


香澄ちゃんは微笑みをたたえたまま

ゆっくりと頷いた。


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