第5話 万優花と香澄の友情
わたしは親友である香澄ちゃんの
お通夜に来ていた。
おじさんとおばさんにお辞儀をし、
香澄ちゃんが笑顔で笑っている
遺影の前で焼香をする。
おじさんは、悔しそうに唇を噛み
おばさんは、放心したように虚空を見つめていた。
わたしは隣の匠くんを見やる。
「匠くん」
わたしが促すと彼はハッとしたような顔をして
焼香をした。
『ねぇ、万優花。もしも、わたしがもうすぐ死ぬって言ったらどうする?』
冗談めかして言う香澄ちゃん。
『いきなりどうしたの?』
『ふと思いついただけだよ』
香澄ちゃんはニコッと笑う。
『香澄ちゃんが死んじゃったらか……。
すごく悲しい。香澄ちゃんはわたしの親友だもん。
香澄ちゃんが死ぬなんて耐えられないよ』
『そっか』
香澄ちゃんはちょっと悲しそうな、でもほんのちょっと嬉しそうな顔をして微笑んだ。
あのとき、香澄ちゃんは何を思っていたのだろう。
きっと、辛かったよね。
香澄ちゃんが学校をやめて連絡も取れなくなって
何でだろう。何があったんだろうって
すごく不安だったよ。
でも、まさか香澄ちゃんが死ぬなんて。
わたしはきっとこれから香澄ちゃん以上の
親友を持てないだろう。
優しくて、可愛くて、真面目なあの子を。
わたしはずっと
忘れられない。
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