第2話 家族

わたしは高校をやめた。

匠くんにも、親友の万優花にも言わずに。


担任の先生は残念がっていたけど、わたしが「誰にも弱っていく姿を見せたくない」と言うと渋々

了承してくれた。


『香澄、退学したって聞いたけどどうした? 何があったんだ? LINEも返してくれないし心配だ。お願いだから返事をくれ。』


匠くんからのLINEだ。


もう何日も連絡を取ってない。


連絡したら、匠くんに泣きついて

しまいそうだったから。


『ごめんね』


一言だけのメッセージを送り、

匠くんのLINEをブロックする。


匠くんだけじゃない。

友達のLINEも全部ブロックして、連絡先も消した。


「.........っ」


嗚咽が漏れそうで口を押さえながら泣いた。


胸が押し潰されるみたいに苦しい。


本当は、みんなと一緒に生きていたかった。

笑い合いたかった。

一緒に出かけたり、はしゃいだりしたかった。


でも、もうそれもできない。

今や叶わぬ願いとなってしまった。


「香澄、体調は大丈夫?」


お母さんが助手席から心配そうに聞いてきた。

今、私たちは、

熊本に住む祖父母の家に移動している。

両親は仕事を辞め、

私と残りの時間を過ごすと決めたみたい。


私は笑顔をつくり「大丈夫だよ」と明るい声で言った。


「無理するなよ」


車を運転している、お父さんが言う。

その声は、震えていて。


「うん」


ごめんなさい、お父さん、お母さん。

先に死ぬなんて親不孝な娘だよね。


「お父さん、お母さん。今までありがとう」


「そんなこと、言わないでよ」

お母さんが悲鳴に似た声を上げた。


「おい、美紀」

お父さんがお母さんをなだめる。


「私、お父さんとお母さんの娘で

本当に良かった」


にっこり笑ってみせる。


お父さんが鼻をすする音が聞こえた。


「神様は残酷だわ。こんなに良い子を.........」


お母さんが目頭を押さえているのが見えた。


お父さん、お母さん。

ごめんね。


ずっと.........ずっと.........


大好きだよ。


私は窓の外を見る。


桜が舞っているのがとても綺麗だった。



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