とある女の子の話2
人の言葉を話す猫に連れられてやってきたのは、森の奥。
そこには帽子をかぶった男と、ウサギが座ってお茶会をしていた。
『おやおや、新しい客人だ』
『客人なんて、招いたか?』
『招いてないな』
『じゃあ客人じゃないよ』
一人と一匹が口をそろえて言う。
『『席がないよ』』
誰も座っていないイスは、たくさんあるのに。
すると、猫さんが言う。
『アンタらには興味はないさ。ここを、特別司書官が通らなかったか?』
『特別司書官だって!?』
一人と一匹が、テーブルに手をつく。
その勢いでティーカップが倒れ、お茶がこぼれた。
そんなことは気にしていない様子で、彼らは言う。
『ここに特別司書官が来たってことはだ、この物語は修復されちまうってことか?』
『おそらくな』
猫さんの言葉に、帽子の男が笑い出す。
『そりゃ、いい。これで、永遠に六時のお茶の時間から逃れられる』
『いや? 分からないぞ? もしかしたらオレたちはそのままかもしれない』
茶色いウサギが言う。帽子の男は体を震えさせる。
『それじゃ、特別司書官が来ようが来なかろうが、どっちでも一緒だ』
『一緒だ』
一人と一匹は顔を見合わせて笑い出す。
『……ダメだ、こりゃ』
猫さんは言うと、ふわりと体を浮かせる。
『話にならないから、次のところへ向かおう。早いところ見つけねぇと、アンタも下手したら、この世界に取り残されちまう』
ここで、夢は途切れた。
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