序章

 昔むかし。……――というほどは昔じゃない昔の話。

 え? それだったら昔むかしって始める必要、ないじゃないかって?

 分かってないなぁ。ここから始めないと物語が始まるワクワク感、出ないでしょ?

 それじゃ、気を取り直して。

 ……――昔むかし。あるところに、物語が大好きな女の子がいました。

 その女の子は、おとぎ話が好きで好きで仕方がありませんでした。

 ある日、本を読み終わった女の子はこう思いました。

『あぁ、私も物語の世界の中に入ることができたらいいのに!』

 彼女には、物語の世界に生きる人たちがとても楽しそうに見えました。

 きれいなドレスを着たお姫様。

 強くて怖そうなドラゴンや魔女。

 魔法の力を秘めた剣を持った王子様や勇者。

 女の子は、そんな人たちが生きる世界に、自分も行ってみたいと思ったのです。

 けれど女の子には分かっていました。そんな願い、かなうはずがないと。

 物語の世界の中に入ることなんて、できるはずがないのだと。

 普通なら、そうだね、とうなずくことでしょう。

 しかしこれは、普通のようで、普通じゃない物語。

 そう、彼女の願いは思ってもみない形で実現することになりました。

 ただこの話はとりあえず、ここでおしまい。続きは次の機会に。

 なぜかって? 今、目の前で新しい物語が始まろうとしているから。

 ウサギに追われて走る少女の行きつく先は、ハッピーエンドか、バッドエンドか。

 その物語の結末は、終わってみるまで誰にもわからない。

 さぁ、一緒に物語の結末を見届けようじゃないか。きっと楽しいぜ。

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