癒しの家

数カ月後王女はディーンを伴い町のある家を訪ねた。

「お嬢様お待ちしておりました」

「ナターシャ準備の進み具合はどう?」

「順調ですよ、色々な方が寄付して下さって思ったよりも設備を整えられました。

中をご案内しますね」

「俺は出ていようか?」

「まだ、準備中だから大丈夫、ディーンも見ておいて何かお願いすることがあるかもしれないから、さ、お嬢様中へどうぞ」

3人は建物の中に入った。

「この家はある豪族の方が無償で提供してくださいました。裏には畑もありますから食事に必要な作物を作ることも出来ます。ここが泊まる部屋です。個室で3部屋用意しました。こちらへ、ここは食堂と台所。動ける方はここでみんなで食事をしたり休んだりできます。使用人もここで食事をとります。奥には湯あみが出来るようになっています。さらに、この部屋はまず容態の確認をするための部屋です。処置が出来ることはなうべくここで行おうと思っています。そのあと落ち着いたら泊まりの部屋に運ぼうかと」

「ずいぶん整えられたのね、何か不足しているものはない?」

「ディーンを通じて城に連絡すると翌日には届けられますから、それに実際にやってみないと解らないこともあるかと思います。それにしても城も貴族も豪族も協力を取り付けるなんて、お嬢様凄いですね」

「私の力じゃないわ、すべてお父様が取り仕切ったことだから」

「でも、お嬢様が提案なさらなくては始まらなかったことですよ」

「そうそう、お嬢が思っていたことを形にしたいと動いたから出来たんだ」

「そう言ってもらえると嬉しいわ。自分がかかわる意味あるのと思い始めていたから」

「そんなぁ!お嬢様あってのこの家です」

「政治に女性が入れないからしょうがないよな。でもこれからは関われるんじゃないか?実際動き出したら男性は入れないだろうし」

「うん、そうね、問題点が出たら改善していかないといけないし、やることはまだまだあるのよね」

「そうですよ、そういえばこの家を利用した方からお金を取らないと言われましたが」

「そう、それじゃないと意味ないから。でも運営には費用が掛かるのよね。後からでもお手伝いしてもらうようにすれば利用する人も利用しやすいかなと思ってる」

「数人雇いますからね。その方たちにも時間があるときには裏の畑の世話とか、手仕事で何か作って売るとか、そうゆうことも考えています」

「そういえば泊まりのお手伝いの人は何所に寝るの?」

「2階に泊まりの為の部屋を用意しています。泊りがあっているときは、2人交代で夜もお世話できるようにするつもりです、家が無い人もいますので、その人はそこで生活してもらいます」

「そういえば、生活に困っている人を雇ったんだったっけ?」

「はい、妊婦だけでなく、女性を助けられたらと思っています」

「それはいいわね、うん、やっぱりナターシャに責任者になってもらってよかった」

「そう言ってもらえれば光栄です」

「実際に動き出すにはもう少しかかりそうね。うまくいくといいな」

「やれることは限られているんだろ。少しでも助けられたらそれでいいじゃないか」

「そうね、うん、そうよね」

王女はそう呟き、笑顔を見せた。2人は王女が何か考えているのが解ったが、王女はそれ以上何も言わなかった。



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