ディーンとの2回目の外出

「失礼しちゃうわ!」

「どうしたお嬢?」

「侍医に『今出来る事は何か』って聞いたら、『寝かせて、栄養取らせて、容態の変化に注意する』と言ってきたのよ!それくらい私でも解るわ!」

「で、その婦人からは何か連絡あったのか?」

「ええ、危ない人を休ませて、食事を与えて、手当できる場所があるといいって」

「それって、二人の言っている事同じじゃないか」

「え?」

「お嬢は何か特別なことを期待したかもしれないけど、今出来る事ってそれくらいじゃないのか」

二人は前に休んだ井戸のところで、お弁当を食べていた。王女はしばらく考えると、

「そうね、そうかもしれない。出来る事ってそんなに特別な事ではないのかも。例えば家を借りて、休む部屋を用意して、食事を与えて、世話をする人を雇って手当してもらうとか・・・」

「そう、それでも民には難しい。維持するにはお金がかかるからな」

「そうなのね、これならできそうだけど、民の側からしたらどうなんだろうか?」

「その婦人に会ってみるか?」

「会えるの?」

「ああ、繋ぎを取ったのは俺だからな。家を知ってるし、お嬢を連れて行くかもしれないと言ってある」

「そうなの!ぜひお願いするわ!」

「じゃ、善は急げだな」

二人は片づけをすると婦人の家に向かった。婦人の家は町の外れにあった。ディーンがドアをノックして

「お嬢を連れて来た」と言った。ドアが開き先日会った婦人が立っていた。

「よくいらっしゃいました、おもてなしも出来ませんがどうぞ中へ」

「お邪魔します」二人は婦人に導かれ家へと入った。

椅子に座ると王女は

「先日はご連絡ありがとうございました。今日は少し案がまとまりましたので聞いてもらいたくお邪魔しました。失礼ですがお名前を教えていただけませんか?」

「私は、ナターシャと言います。ディーンの母親ですよ」

「え!」

「戦で主人を亡くしてからお産の世話をしながらディーンを育てたんです。お嬢様が民の声を聞きたいというのはディーンから聞きました」

「知らなかった、ディーンなんで黙ってたのよ!」

「あえて言うことではないだろう、母が経験者だというのは間違いないんだし、それよりあの話」

「あ、そうだ。まだ粗削りなんだけど、『家を借りて、休める部屋を用意して、食事を与えて、世話する人を雇って危ない人の手当てをする』というのはどうかしら?」

「お嬢様、そこまで考えてくださったんですか、ええ、それが出来ればずいぶん違います」

「よかった、でね、もしそれが実現出来たら、あなたに責任者になってもらいたいの」

「え!」

「ディーンがいれば城との繋ぎもとりやすいし、何よりも経験豊富な人が責任者になるのがいいと思うの」

「そうですね、考えておきます」

「ありがとう」

それから3人は色々と話に花を咲かせた。暫くして、

「お嬢、もうそろそろ帰らないと」

「え、もうそんな時間。もう少し話したかったけどしょうがないわね」

「またいらしたらいいですよ」

「そうね、ディーン帰りましょう。今日はありがとうございました」

二人はナターシャに見送られて城へと帰って行った。

「ディーンから色々聞いてたけどずいぶん落ち着かれようね。それにしても聡明でかわいい方だわ。これが実現できれば民も随分と助かる。私の方もやりたいことを考えておくことにしましょう」

ナターシャは二人が見えなくなるとそう呟き、家へと入って行った。



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