侍医との会談

侍医と約束の日、王女は身支度を整えて侍医の部屋へハンナと向かった。

部屋に付き、ハンナがノックすると「お待ちしておりました。お入りください」と部屋の中から声がした。

ハンナがドアを開け、王女が中に入った。続いてハンナも部屋に入った。

「フィザリス様よくいらっしゃいました。どうぞおかけ下さい」

王女は勧められた椅子に座り部屋を見渡した、侍医の他に婦人がいた。

「フィザリス様のお知りになりたいことはハンナより聞いております。町に行くのが難しいとのことでしたので、このご婦人に来てもらいました」

「それはご苦労です。よろしくお願いいたします」王女は頭を下げた。

「では、話に移りましょうか。王女様のやりたいことは、『出産で亡くなる女性を減らす手立てはないか』で、間違いありませんか?」

「その通りだ。私の母上もそうして亡くなっている。私も女だし、いずれ世継ぎを産まなくてはならぬ。安心して子を産めるようにしたい、民の為にも自分の為にも」

「そうですか、どうしてお産で母親が亡くなるのかですが、もともと母親が体が弱く、お産に耐えられなかった。子供が逆子などで難産となり、お産の時間が長引いた。子供は生まれたが後産がうまくいかず出血が止まらなかった。後は妊娠期間の過労などですね。ご婦人、民の方はどうですか?」

「はい、大体そのような場合が多いです。妊娠しても子を抱えながら働かないといけませんし、どうしても無理がかかります。子が生まれてからはぶってでも動かないといけませんので、体の負担が大きくなってしまいます」

「そんなに過酷なのか?」

「はい、何世代も一緒に暮らしている家庭も多いですし、家事に仕事、そして乳児の世話と休む間もありません。民の間では普通のことです」

「そうなのか、私の知らない事ばかりだ。どうすれば負担が減らせると思う?」

「それは・・・何とも言えません」

「フィザリス様、そんなに矢継ぎ早に言われても、答えにきゅうします。私が言えることは今できることは限られているということです」

「限られている?」

「はい、お産に関しては運としか言えないことも多いのです。神の領域と言えばおわかりになるかと思いますが・・・」

「では、限られているという出来ることとはなんだ!」

「それわ・・・」

「はっきりしないな、何故だ。お前は城一番の侍医なのだろう。考えたこともないとでも言いたいのか。ならば猶予をやる。今やっていることを数日中にまとめて、報告しろ!いいな」

「承知いたしました」

「ご婦人、足を運んでもらったのに、焦った質問をしてすまなかった。どうだろう、民の方で『こうゆうことをして欲しい』と言うことをまとめてはもらえぬか。私自身城の中しか知らず、これからどうしたらいいか迷っているのだ。引き受けてはくれまいか」

「ありがたいお言葉、承知いたしました」

それを聞くと王女は立ち上がり、「二人とも頼んだぞ」と言うとハンナと部屋を出て行った。

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