王への報告とお願い

従者に連れられ王女は王の執務室へ向かった。

従者が「王女様をお連れしました」とドアの前で叫んだ。

「入りなさい」中から王の声がした、王女は従者が開けたドアから部屋の中に入った。

「お父様ご報告とお願いに参りました」

「フィザリスよ、報告と、お願いとな?ま、掛けなさいゆっくりと聞くとしよう」

「今日ディーンといろいろなところを見て回りました。そして城が民たちの働きによって維持されているのを見てきました。そして先日私が落ちかけた絶壁にも行き自分がいかに無謀なことをしていたことを実感しました」

「そうか、民がおらぬば城も国も成り立たない。それは確かなことだ。それでお願いと言うのは?」

「はい、私はお母さまが私を産んで産後の肥立ちが悪くて亡くなったとを聞いていました。そして民の間でもそうゆうことがあっていることを知りました。私は自分もそうなるのかと怖くて逃げていましたが、今日ディーンと話をしていて、お産で亡くなる人を減らすことは出来るのではないかと思い始めました。まだどうすればいいのか道筋はたっていないのですが、知識を集めて出来ることを探したいのです。ですから動く許可をお父様に頂きたいのです」

「お産で亡くなる人を減らす・・・。そうか、フィザリスよ,そなた母が死んだ訳を知っていたのだな。だが、勘違いしないでくれ、彼女はそなたが生まれたことを大変喜んでいた。短い間ではあったがお前を抱きあやしていたときの幸せそうな顔が今でも目に浮かぶ。そしてそなたの名は母が付けたものだ・・・・。解った、そなたがやりたいようにしたらいい。民の為そして、お前を心から愛していた母の為にもな」

「ありがとうございます。母上は私が生まれたことを喜んでいたんですね。それが聞けただけでも気持ちがだいぶ楽になりました。それでは、また筋道が立ったらご報告に伺います」

王女はそう言うと立ち上がり一礼をして部屋を出て行った。


「ディーン出てこい!」

「はい!」物陰からディーンが姿を現した。

「何を王女と話したかわからぬが、一日でずいぶんと変わったものだ。いったい何を話したんだ」

「王女様から誰にも言うなと言われましたから、言えません、お産で亡くなる人を減らせるのではと言う提案と次期国王にしか出来ない事とは言いました」

「そうか、なんか角が取れて、一段と可愛くなってような。親バカかな。ディーンよ、これからも王女に付いてくれるか?」

「はい、城の外に出るときは行きます」

「そうか、そなたの報告も興味深い。フィザリスをこれからも助けてくれ」

「王の命令とあれば、承知いたしました」

「頼んだぞ!」

王がそう言うとディーンは一礼して部屋を出て行った。残された王は

「フィザリスには次期国王になることしか教えてこなかったが、なんと自分で道を探してきた。これからが楽しみだ、なあ、フリシアお前の産んだ娘は立派に成長している。これからも見守っていてくれ」と王妃の肖像画を見上げながら呟いた。


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