動き出した王女

二人が城に戻ると、侍従がすぐにやって来た。

「ただいま戻りました。お父様に馬の世話と身だしなみを整えたら報告に行くと伝えて」

「承知いたしました」侍従はそう言うと城の中に戻って行った。

「馬の世話って?」

「普段は自分でやっている。前の時は体が動かなかったからしょうがなかったんだ」と王女は言うと馬屋の方にゆっくりと馬を走らせた。

「なるほどね」ディーンもその後をついて行った。

馬屋に付くと王女は馬をつなぎ、馬屋番が持ってきた桶の水を飲ませ、馬を洗い始めた。

「今日はたくさん走ったから疲れたね。後でおいしいエサをあげるからね」高飛車でもなく優しい言葉で馬に話しかける。ディーンはその様子を見てびっくりしたが王女が馬が好きな理由は俺と同じかと思った。そしてそっとその場を離れた。

「さて、これでいいかしら?気持ちよかった」王女は馬に話しかける。馬は嬉しそうに王女にすり寄った。

「さて、餌をやって部屋に戻りましょうか」王女は馬にエサを与えると城の自分の部屋に戻った。

「お帰りなさいませ」ハンナが出迎える。

「汗かいたから湯あみをして着替えてからお父様の所に報告に行くわ」

「その前に喉が渇いたでしょう。お茶をお飲みください」

「ありがとう」王女はハンナが用意したお茶を飲むと、湯あみと着替えに行った。

「なんか、雰囲気が変わられたような。落ち着いたというか、吹っ切れたというか。どちらにしてもいいことだけど」ハンナは呟くとお茶器を片付けた。

暫くすると王女が戻ってきたので、ハンナは髪を整え王に使いを出した。

「今日はどんなところに行かれたんですか?」

「色々なところに案内してもらったわ。城が民の働きで存在できるのも解ったし。やりたいことも出来たわ」

「やりたいこと?」

「そう、出産で亡くなる人や子供を減らしたいの。お母さまが私を産んで産後の肥立ちが悪くて亡くなったように。私も女だからそれが怖かったんだけど、でも減らすことはできるかもしれないと思い始めたの、それをお父様に話して動く許可を貰おうと思って」

「そうですか」

「私にしか出来ない事、そして民の為にもなる事。次期国王としてこれほどやりがいのあることは無いわ。それを気づかせてくれたことに感謝しなくては」

そう話をしていると従者が「王様がお会いになります」と連絡してきた。王女は

「行ってくるね」そう言うと従者と王の所へ向かった。

「何があったかわからないけど、こんなに変わるなんて。ディーンと出掛けてよかったようね。でもそんなことを考えていたとわ」ハンナは王女の変化を好ましく思った。

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