部屋に戻って

王女は部屋に戻ると、窓際の椅子に座りぼんやりと外を眺めた。

「王女様?」ハンナがお茶を持って来て話しかけても返事が無い。

「姫様!」もう一度呼びかけると

「姫様呼ぶな」と小さな声がした。

「どうなさったんですか?王様のお話があったんでしょう?」

「これから城から出るときはディーンと一緒でなければ許可しないと言われた」

「よかったじゃないですか、城から出られるんでしょう?」

「それはいいのだが、それを聞いたディーンが何と言ったと思う。『外では私の言うことを聞くことを承知しろ』だとさ、男の言うことを私が聞かなくてはならないなんて・・・・」

「でも城の外には行きたいんでしょう?」

「行きたい、民の暮らしとかこの国の様子をもっと知りたい。いずれこの国を継ぐのだから」

「なれば、少しのことは我慢なさらないと。人の上に立つものは忍耐が必要です」

「解ってる、解ってはいるが・・・・正直ディーンが怖いのだ」

「怖い?」

「なんと言っていいか自分でもわからないが、人を食った言い方をするし、見透かされているようなそんな気がする」

「それはしょうがないでしょう、人生の経験が違います。王女様はどういっても城の中しか知らないのです。いい機会じゃないですか、色々と経験されたらいい」

「そうだろうか?私は国を継ぐということで男も女もないと思っていた。だが、彼は違うようだ?」

「人は一人一人考えが違うものですよ。ディーンを男として見ていらっしゃるのでは?」

王女はハッとしたように顔を上げた。

「解らない、自分の心が解らない」

「ディーンだって王女様に対して無礼をすることは無いでしょう、話をお受けになって少しづつ考えたらどうですか?」

「そうだな、そうした方がいいか、もう少し考えてみる」

王女はそう言うとお茶を飲み目を外に向けた。


数日後外に出たいという気持ちは高まるばかりで、王女は王に「ディーンの言うことを聞くから外に行かせてください」と申し出た。王はディーンに繋ぎを取りディーンも承知した。

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