第9話 もう1人の主要人物・エイル

『この世界からの出口は1つ。

 カギへのヒントは5丁目にあり。」


 花が消え、今度はこの言葉が表示された。

 ちなみに、西門のとき同様、謎の壁にはばまれて東門は通れなかった。

 残ったヒントは、レストランの住所【3丁目12番地の4】だけ……。


「ヒントは5丁目って書いてるし、行ってみよう!」


 ウサトは目を輝かせ、満面の笑みでこちらを見つめてくる。

 この笑顔だけで、「ウサトとなら頑張れる」と思わせてくれるからすごい。


 ◇◇◇


「――なんだろう、このマーク。3丁目にはなかったよね?」


 5丁目の一部の建物には、〇や△、☆などのマークが描かれていた。


「お嬢さん観光客かい?」

「えっ……ええと、はい」


 突然声を掛けられ驚いて振り返ると、白髪白髭のおじいさんがいた。

 挙動不審に見えたのだろうか。


「ドアに描かれたマークはなんですか?」

「うん? マーク?」


 おじいさんはドアを見て、不思議そうに首をかしげる。


 ――あ、違う。この”違和感”はヒントだ!

 ヒントって、ここの住人には見えないの!?


「ヒントやアイテムには、本来の物語と無関係に設置されるものもあるんだ。そういうのはボクたちにしか見えない」


 それはもっと早く教えてほしかった!


「ご、ごめんなさい。気のせいだったみたい」

「そうかい? そうだ、せっかくこの町に来たなら工房を見学させてあげよう。5丁目はカード職人の区画なんだ。ついておいで」


 おじいさんは、そう微笑んで歩き出した。


「ありす、ドアのマークはボクが調べておくよ」

「わ、わかった!」


 ドアのマークはウサトに任せて、わたしはおじいさんについていくことにした。

 工房の入り口の看板には、【5丁目4番地の12 第3工房】と書かれている。

 中では少年が1人、カード作りに勤しんでいた。


「じいちゃんおか――誰、その子」

「観光客だよ。声をかけたついでに工房を案内しようと思って」

「ふーん」

「おじゃまします」


 少年は、椅子に座ったままちらっとこちらを見て、興味なさそうに作業に戻った。不愛想な子!


「ごめんね。エイル、挨拶くらいちゃんとしなさい」


 ――――え!?

 い、今エイルって言った!?


「……どうも」


 おじいさんに促され、めんどくさそうに頭を下げた少年。

 なんと彼は、もう1人の主要人物エイルだった。

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