第10話 もう1枚の「願いのカード」

 まずい。

 まさかエイルに会っちゃうなんて。


 でも彼がエイルなら、ここにもヒントがあるのかも。

 なら逃げ帰るわけにもいかないよね。


「出来上がったカードは毎月一度、月と星がもっとも輝く夜に海空の光を浴びさせるんだ。海の上には女神様がいらっしゃるからね」

「め、女神様!?」

「伝承だよ。我々はそれをとても大切にしているんだ」


 海の上に女神様がいるなんて素敵!

 そう思ったが。


「…………伝承なんかじゃない。オレ、見たんだ」

「エイル、また夢の話か。あまり不謹慎なことを言うもんじゃない」

「ただの夢じゃないんだ。本当に見たんだよ……」


 おじいさんに苦い顔でたしなめられ、エイルは悔しそうに唇をかむ。


「わ、わたしは信じるよ」

「……よそ者には関係のない話だ」

「こらエイルっ!」

「…………」


 エイルは不機嫌そうに椅子から立ち上がり、そのまま出て行った。


「すまないね、……そうだ、お詫びにあれをあげよう」


 おじいさんは、工房の奥から1枚のカードを持ってきた。


「エイルが作ったカードだよ」

「そんな大事なカード受け取れません!」

「エイルは見習いで、あの子が作ったカードはまだ売れないんだ。でも形は少しいびつだけど、儀式は済ませてある。君がもらってくれればカードも喜ぶだろう」


 い、いいのかな。

 でもくれるって言うなら……。


「ありがとうございます……」


 そして受け取って気づく。これ、絶対アイテムだ。

 地図を確認したいけど、ここで突然広げるのも……。


「あの、ごめんなさい。わたし人と待ち合わせしてて……」

「そうだったのか、引き留めて悪かったね。1人で戻れるかい?」

「はい。カードありがとうございました」

「またいつでもおいで。よい旅を」


 先ほどの場所へ向かったが、ウサトはまだだった。

 わたしは地図を開き、工房の位置に赤い印が増えているのを確認する。


 カードの縁には、5種類のマークが連なった飾り枠が描かれていた。

 これ、絶対ドアのマークと関係あるやつ!


「ありす、遅くなってごめん!」

「あ、ウサト!見て、カード!」

「えっ!? どうしたのそれ」

「さっきのおじいさんにもらったの!」

「おおお!」


 ババン!とカードを前にかざすと、ウサトが拍手で褒めてくれた。


「ボクも確認終わったよ。マークは5種類あって、5丁目を囲むように配置されてた。さっそく西門に向かおう!」

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