第4話 <反転の町>脱出のヒント探し

「雲の上を歩くって違和感がすごい」

「ここは本の世界だからね。ありすが読んでた本そのままのはずだよ」


 たしかにわたしが昨日買った本も、『反転リバーサルタウンの秘密』という本だ。

 表紙には、上空に輝くキラキラ波打つ海と、海を見上げる白いワンピースの黒髪少女が描かれていて。


 中身はほとんど読んでないけど、裏にあらすじが書いてあったな。


『空と海が反転した町、反転リバーサルタウン

 この町で暮らす少女・リスタは、海に憧れていた。

「あの先には、何があるんだろう?」

 そんな中、リスタは海を目指す少年・エイルと出会う。

 エイルは、「海にはこの町の秘密がある」と言い出して――。

 反転リバーサルタウンの秘密を探る、冒険ファンタジー!』


 ――みたいな感じだったはず。

 わたしは、覚えている範囲であらすじをウサトに伝える。

 記憶力はそこそこあるんだよね。


「それ、すごい手がかりだよ! まずはリスタって子を探そう。でも、彼女たちの行動に干渉したらいけないよ。目的は、あくまでカギを探すこと。忘れないでね」

「わ、分かった」


 なんか、裏で暗躍する組織の人みたいな気分……。


「ほかに覚えてることはない?」

「そういえばリスタ、きれいな噴水に座って海を見上げてた。たしか、地図の真ん中あたりに広場みたいな場所があったよね」

「よし、そこだ!」


 わたしとウサトは、中央の広場へ向かうことにした。

 30分ほど歩くと、道が一気に広くなっている場所に出る。

 表紙と同じ噴水もあった。


「ねえあれ、リスタじゃない!?」

「ボクはリスタの外見を知らないんだ。でもありすがそう言うならきっとそうだよ」


 リスタは、じっと海を見上げていた。

 表紙のとおりの光景だ。


「声かけてみる?」

「物語に干渉するような行動はダメ! あそこのベンチで様子を見よう」


 ベンチに座り、リスタを見張りつつ海を見上げる。

 心地よい風に合わせて水面をゆらす海は、透き通ってどこまでも美しい。

 太陽が見えるわけでもないのに、空のように明るかった。


「――あ、リスタが移動するよ! 2丁目と3丁目の間の道に入っていく。見てくるから、ありすはここで待ってて!」


 ウサトはそう言い残し、急ぎ足でリスタと同じ道へ消えていった。

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