第3話 西門に見つけた”違和感”
「ねえウサト、もう朝読の時間終わっちゃう」
「大丈夫、カギさえ見つけてくれればボクが調整するから」
そんなことできるの!?
……ううん、それより今は、どうにかカギを見つけなきゃ!
町はオレンジの断面のような形状になっていて、6つの地区に分かれていた。
外へと続く門が東西に1つずつあり、大通りがその2つの門を繋いでいる。
「わたしたちは今、西の端にいるってことだね。そこの大きな門が西門かな」
「うんうん。案内所があるここが1丁目、その横に2丁目と3丁目、3丁目前の大通りを挟んだ位置から4丁目、5丁目、6丁目って一周してるみたい」
「まずは西の門を調べよう。出入り口はここと東門しかないんだし」
わたしとウサトは、背後にある西門へ向かった。
門にはアーチ状の穴があいていて、閉じられているわけではない。
町の人も自由に出入りしている。なのに。
「どうしてわたしたちだけ出られないの!?」
「ボクたちは、<次元バグ>によってこの町に飛ばされたイレギュラーな存在だからね。ここの住人たちとは違うんだ」
門から町の外が見えているのに、水みたいな透明のぶよぶよした何かに阻まれて、通ることができなかった。
一生出られなかったらどうしよう?
そんな考えがよぎって、じんわり目頭が熱くなる。
「泣かないで、ありす。きっと大丈夫だから」
「う、うん……」
出られないなら門のそばにいても仕方がない。
そう思ってUターンしようとしたそのとき。
「……ん? ねえ、これ何?」
「これは――カギに繋がるアイテムだ!」
西門の壁に、タブレット端末のようなものが張りついていた。
端末の下には、カード状の薄い何かを差し込めそうな穴があいている。
真っ白な壁に張りつけられたタブレット端末は、たった今設置されたばかりのような”違和感”を放っていた。
「じゃあ、ここに入れるカードを探せばいいってこと?」
「それだけじゃないと思うけど、それも必要なのは確かかな」
だけじゃないのか。
でも、とりあえずは一歩前進ってことだよね?
「ねえ見て、地図が光ってる!」
「地図自体がアイテムの1つなんだ! 光ってるところをタップしてみて」
赤く光る部分をそっと指で触ると、地図上に拡大画面が現れて、今発見したタブレット端末が表示された。
「これはいいアイテムだね。この調子でどんどん手がかりを探していこう!」
ウサトの目が頼もしく輝く。
いつの間にか、わたしの心も少しだけ軽くなっていた。
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