第2話 うさぎさんがイケメンに!?

「違和感とヒントってどうやって探すの?」

「明確に分かる謎があるはずなんだ。ちなみにボクの姿はここの住人には見えないよ。キミとボクの会話は、認識阻害で気づかれないようにしてる」

「に、にんしきそがい」


 このうさぎさん、魔法が使えるのかな。ちょっとうらやましい。


「――そうだ、キミ、名前は? ボクはウサト」


 わたしの少し前をぴょこぴょこ進んでいたウサトは、振り返ってそう見上げてくる。可愛い。


「わたしは白雪ありす。ありすって呼んで」

「ありすか、可愛い名前だね。――っとそうだ。この姿だと会話しづらいよねっ」


 ウサトは呪文を唱え、わたしより少し年上のうさ耳イケメンに変身する。


「えええええええええっ」

「あ、あんまり大きい声出すと、認識阻害の効果を上回っちゃうから気をつけて!」


 真っ白で少しクセのある髪に色白の肌、わたしより5㎝くらい高い身長。

 服はさっきまで着てなかったけど、今はベスト姿の執事みたいな格好をしている。


「ご、ごめん。でもまさか、人間の男の子に変身するなんて」

「ありすに会う前に変身しておくはずが、うっかりしてた。ごめんね」


 失敗をごまかすように笑うウサトの笑顔に、思わずドキドキしてしまう。

 これじゃどっちが話しやすいか分からないよ!


「じゃあ行こう! はぐれないように手、つなごうか?」

「いやいや大丈夫! ちゃんとついていくし!」

「そう?」


 ウサトは不思議そうに首をかしげたが、特に気にする様子もなく先へ進み始めた。

 歩くと、うしろからでもうさ耳が上下に揺れているのが分かる。

 可愛い。イケメンなのに可愛い!


「まずは案内所に行ってみようよ」


 ウサトが指差した先には、青い看板が掲げられている建物があった。

 が、看板に書かれている文字はアルファベットですらない。


「ウサト、これ読めるの?」

「あっ、そっか。ちょっと待って――えいっ!」


 ウサトがわたしに向かって何かを放つと、文字が読めるようになった。


「これで大丈夫。さ、行こう!」


 何でもないことのように案内所へ入っていくウサトを見て、改めて不思議な世界に迷い込んだことを思い知らされた。


「いらっしゃい。お嬢さん1人で旅行かい?」

「えっ……っと、はい」


 そっか、ウサトの姿は、この世界の人には見えないんだっけ?


「しっかりしてるねえ。<反転リバーサルタウン>へようこそ」


 対応してくれたのは、ラフな格好をした陽気なおじさんだった。

 地図を受け取り目をやると、現在地が赤い丸で囲ってある。

 横では、ウサトが「ふんふんなるほどー」と地図を覗き見ている。


「この町の端から端まで歩いたら、どれくらいかかりますか?」

「小さな町だし、1時間もありゃ着くんじゃないかな」


 どうやら本当に小さな町らしい。


「ありがとうございます!」

「はいよ。良い旅を!」


 この<反転リバーサルタウン>は、円形の巨大な壁に囲まれた町で。

 わたしたちが今いるのは、町の西側のようだ。

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