朝読トリップ ~朝読してたら本の世界に転移! 脱出のために<扉>のカギを探しますっ~

ぼっち猫@「ラスボス料理屋」書籍発売

第1話 わたし、教室にいたよね!?

「――ここ、どこ?」


 朝読の時間、教室で本を開いていたはずのわたし、白雪ありすの目の前には、目を疑う光景が広がっていた。


 足元には、なぜか立つことのできる空と雲が続いていて。

 上空――本来空があるべき場所には、美しい海が、まるで晴れた日の空のような明るさで波打っていた。

 水は重力なんてものともせず、上空から水の一滴も落とすことなく地上――空と雲の上にキラキラとした波模様を生み出している。


 き、きれい――じゃなくてっ!

 わたし、教室で本を読んでたはずだよね!?

 でもこの光景、最近どこかで――。


 ここは小さな田舎町のようで、雲の上には建物が立ち並んでいる。

 建物はどれも白と青で統一されていて、いつかテレビの旅番組で見た、ギリシャのサントリーニ島に立っているような気持ちになった。

 町のあちこちには、美しい色とりどりの花が植えられている。

 こんな状況じゃなければずっと見ていたい光景だ。


 ……もふ。


「――ひゃっ! なに!?」

 

 景色に見とれていると、足元にふわふわしたものが触れた。

 足をどけて下を見ると、真っ白いふわモフうさぎが後ろ足で立ち、こちらを見つめていた。


「ボクのこと、見える?」

「――へっ?」


 う、うさぎがしゃべった!?


「見えてるみたいだね。じゃあキミが<次元バグ>に巻き込まれた女の子か」

「じ、じげ――?」

「<次元バグ>。キミはこれに巻き込まれて、本の世界に来ちゃったんだ」


 うさぎがしゃべってる上、わけの分からないことを言い出した。

 でもどこかで見たことあると思ったら、わたしが読もうとしてた本の世界なんだ。


 混乱でぼんやりしていた頭が、少しずつはっきりしていく。

 それと同時に「早く元いた世界に帰りたい」という焦りと不安が押し寄せた。


「わたしを助けに来てくれたってこと? なら、わたしを元の世界に帰してっ」

「……それなんだけどね。帰してあげたいけど、このままじゃ帰れないんだ」

「そんなの困る! お母さんもお父さんも心配するし、きっと学校は大騒ぎだよ」

「そこは大丈夫。でもカギがないとここから出られないし、ボク1人では探せないんだ。だから一緒に<扉>のカギを探して、<次元バグ>を修正してほしい」


 そ、そんな――。


「カギはこの町のどこかにある。それ以外のことはボクにも分からない。とにかく、この町にあるはずの違和感とヒントを探そう」

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