警備隊員達も……

※更新が遅くなり申し訳ありません。

書き溜め出来たのでこれから数話更新します。


 ※※※


 けたたましい警笛の音が突如耳に入り、4人がハッとしてその方向を見る。すると先程の門番の1人が、ニヤつきながら警笛を吹いていたのが目に入った。ニャリルとエイリーはびっくりして揃って耳を塞ぐ。


「ギャー! 煩いニャー! 急に何だにゃー!」


「びっくりしたあー! 私等耳良いから尚更うるさっ! ……って今のって警備隊員招集の笛じゃない? もしかして、私達を捕まえる為?」


 ニャリルとエイリーがそう言うが否や、耳の良い2人はパカ、パカ、と沢山の馬の蹄の音が、町の中の遠方から鳴るのが聞こえた。


「ヘヘ。俺等2人なら何とかなったかも知れねぇが、大勢だとどうかな?」


「多少はやるみたいだがなあ。女の癖に冒険者なんかやってるお前等が悪いんだぞ?」


 その言葉に4人は揃ってキッと門番2人を睨む。その視線ビクっと反応する門番達。


「そんな女に負けた癖に」


「そもそも女の癖に冒険者って、私の事を知っていたのでしょう? 言っている事が支離滅裂だわ」


「ただ町に入りたいだけなのに、何でそんな面倒な事言い出すのかにゃ」


「本当この世界って、男尊女卑酷いよね」


 4人それぞれが門番に苛立っていると、ミークとラミーにも蹄の音が聞こえて来た。


「どうする? やっつけちゃうのは可能だけど」


「でもこいつらみたいな反応されると面倒よね。一旦隠れて様子を見ましょう」


 ミークの問いにラミーがそう言う答えると4人は揃って頷き、そして門番をチラ見する。またもその視線にビクっと反応する2人。どうやら中に入るのを止めようとする気は無さそうなので、4人は早速中に入り始める。だがすんでのところでエイリーだけが、ぐいっと何かに引っ張られ止められた。


「うげ! な、何?」


 驚いたエイリー。傍目には見えない何かに首襟を引っ張られている。彼女を制したのは姿を隠している精霊、スピカだった。


『ま、待ってエイリー! 僕入れない!』


「え? 何で?」


『結界が張ってある! これ僕通れない!』


「エイリー! 何してるにゃ! 急ぐにゃ!」


 既に中に入ったニャリルから声を掛けられ焦るエイリー。


「とりあえず町の外で待ってて。出てきた時また会えるよね?」


『うん多分大丈夫。ごめんね一緒に行けなくて』


「仕方無いよ。また後で!」


 うん! と元気な返事が返って来たのを確認して、エイリーも急ぎ町の中に入った。その様子を端で見ていた門番2人は顔を見合わせる。


「……あのエルフ、誰と喋ってたんだ?」


「独り言? ……そういやあの女、風魔法とはちょっと違う変わった魔法みたいなの使ってたが、それと関係あるのか?」


※※※


「エイリー、大丈夫?」


「え? う、うん!」


 ミークに声を掛けられ若干の焦りを覚えながらも返事するエイリー。


「とりあえずエイリーとニャリルはこれ使って」


 そう言ってミークは、あの子ども達が使っていた隠蔽のマントを異空間収納のポシェットから出して手渡した。2人はそれを受け取って直ぐ、近くの物陰に潜み、そして見えている上半身にだけそれを被った。すると直ぐ様姿が見えなくなった。


 そしてミークとラミーは、共に空にふわりと浮かび上がり、近くにあったとんがり帽子状の屋根の裏に隠れた。更にミークは、ドローン5機をポシェットから取り出し空中に放り投げる。途端、ドローン達はふわり、と浮遊した。


「AI、ドローンで上空から様子を見てて。更にニャリルとエイリーを守って」


 ーー了解。ドローン2機を使用し上空から撮影します。残りの3機はニャリルとエイリー……、赤外線センサーにて場所をサーチ。発見しました。2人の傍で防衛を開始しますーー


「相変わらず不思議な子」


 端で見ていたラミーが呟くのを聞いたミークが「そう?」と答えると同時に、蹄の音の正体、警備隊が門の前に到着した。ドローンが上空から警備隊達を撮影、ミークの脳内に映像を送信する。


 ーー警備隊員、計25名ですーー


 AIの言葉を聞いてミークも左目をズームし目視で確認をする。すると門の近くで、先程の門番2人と何やら話ししている、先頭の白馬に乗った1人が確認出来た。


 だがこの距離では会話は聞こえない。ミークはAIに指示し、先程飛ばしたドローン2機のうち、1機をその先頭の白馬に跨る警備隊員の傍で見つからない様ホバリングさせ、もう1機をこちらに戻した。


「あっちをマイクモード、こっちをスピーカーモードに」


 ミークがそうAIに指示し、即了解、と脳内にて返事があって直ぐ、ミークとラミーの傍で浮遊しているドローンから音声が聞こえて来た。


「子ども達見つけた時もこうやって音声を出していたのね。これ魔法じゃないって本当に不思議」


 ラミーが呆れながら呟きつつ、門番と白馬に跨る警備隊とのやり取りに耳を澄ませる。


『警笛が聞こえやってきたが……、一体何がどうした? 何も居ない様だが?』


『あ、あれ? さっきまであいつ等……』


『き、消えた?』


 ミークは左目のスコープで、門番2人が町の中を覗き込みながら焦っているのが見えている。


『ち、違うんです隊長! さっきまで女達が……』


『そ、そう! えらく美人な女4人が来たんです!』


 門番2人の報告に、先頭の警備隊員、隊長と呼ばれた男が眉を顰める。


『ほう。美人の女4人』


『ええ! そりゃあもう!』


 それを聞いた、隊長と呼ばれた男はふと辺りを見渡す。


『で? その女達はどこだ? 当然捕まえたんだろう?』


 やや冷ややかな声でそう問いかけると、門番2人は慌てふためく。


『そ、それが……。さっき門を抜けたと思ったら……』


『見当たらなくなってしまって……』


 2人の弁明を聞いて隊長と呼ばれた男は片眉をピクリと上げる。


『門を抜けた? 何も見かけなかったが? ……まさか下らない妄想で俺達を呼んだのか?』


『ま、まさかそんな事しませんよ! 本当なんです!』


『そ、そうだ! その中に、あ、あの魔法使いの! ゴールドランクのラミーが居たんです!』


 ラミーの名前を聞いた隊長は真顔になる。


『ラミーだと? 王都のあの有名人の? ……お前等の話を信じるとして、デムバックに何しに来たって言ってたんだ?』


 突っ込まれた2人はハッとする。


『そ、そういや……』


『聞いてない……です』


 門番の回答に隊長は明らかに怒りを含んだ表情に変わる。


『聞いてないだと? お前達門番の役目は、町に入ってくる者共を監視する事だろうが。来た者の目的を確認は必須だ。それを怠ったのか?』


 そこで、後ろで聞いていた他の警備隊員達が声を掛けてきた。


『ていうかお前等、最近女抱いてなくて妄想拗らせたんじゃねーか?』


『あー、あり得るなあ。いい女は殆ど町長んとこにいるからなあ』


『つっても今は、受付嬢しかいねぇけど』


 それを聞いた門番2人は必死の形相で言い返す。


『本当に居たんだよ! それを証拠にとっ捕まえようとしたら、ほらここ! 凹んでるだろ? 攻撃食らったんだよ!』


 門番がムキになって凹んでいる胴の辺りの鎧を見せそう大声を出すと、警備隊員達はシーンと静まり返った。


『ちょっと待て。……もしかしてお前等、女と戦った?』


『それで逃がした、って事か?』


『じゃあお前等、女に……、負けた?』


 各々隊員達の言葉を聞いて、門番2人はしまった、と揃って口を手で抑える。


『ヘッ。どうやらその様子じゃ間違いないみたいだ』


『ギャハハハ! 女に負けたって情けねぇ!』


 隊員達が一斉に皆大笑いする。それを見て門番2人はカッとなり更にがなり立てる。


『う、うるせぇ! 油断してたんだよ! まさか女如きが冒険者だなんて思わねぇだろ!』


『そ、そうだ! しかもラミーまでいたんだぞ!』


 揃って言い換えしている門番の様子を見て、隊長は顎に手を当てる。


『にしてはその鎧の跡、魔法の攻撃じゃない様に見えるが?』


 警備隊長がそう一言零すと、2人は一生懸命言い返していたのが、はた、と止まり固まった。


 確かにラミーは居た。だがラミーは2人と対戦していない。ラミーに負けた、となればまだ、ゴールドランクなので多少格好はつく。だがそうではない。ただの女に負けたのだ。これ以上語ると大勢の前で更に恥の上塗りになる、と気付いたのである。


 急に口を噤み冷や汗を垂らしながら黙る2人を見て、顎を触りながら怪訝な顔をする隊長。


『先程、女なのに冒険者、とも言っていたな? それはラミー以外に居た女達も冒険者だという事だな? 王都の様な栄えた都市には少ないが女の冒険者も居る、と言うのは聞いた事がある。が、女4人全員が冒険者というのは俄に信じがたい……。まあ良い。とにかく状況を聞こう。お前等の言う通りその4人が上玉だって事なら、尚更知る必要がある』


『……じゃあ捕まえたら、俺等もおこぼれに預かりますよ?』


『町長に差し出す前に、まず俺等で可愛がってから、て事で』


 門番2人は漸く話を聞いてくれる、と安堵すると共にきちんと自分達の要望を伝えると、隊長は分かった分かった、とやや呆れた様子で返事した。


 

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