やはり異常だった
※※※
ミークは明らかに呆れ顔で両手を上げ肩を竦める。
「はあ全く。女がー女がーって。弱い癖に偉そうが過ぎる。一体女を何だと思ってんの?」
ドローンから聞こえて来たやり取りを聞いたミークが辟易とした表情でそう呟く一方で、ラミーは何処か真剣な顔をしていた。
「ラミー、どしたの?」
「う~ん。どうも酷すぎるのよね」
「酷すぎるって?」
「男は女より優れている。冒険者なんて以ての外。それが確かに共通認識ではあるけれども、だからといって女をあそこまで卑下する事は無いわよ。男も女の役割を理解し、守る存在だと思っているものよ。力が無くても女は子を産む事が出来るから、寧ろ尊敬している男だって居る位だもの」
ラミーの言葉を聞いてミークは「そうだよね!」と声を明るくする。
「いくら女性が弱いって言っても、男に出来ない事だって沢山あるし、ファリスのネミルのご両親は本当仲良いし、ああいうのは他の町でも普通にあるよね?」
ええ勿論、とラミーが答えると、ミークは良かったぁ~、、と何やらホッとしている。
「何かファリスの人達が特別で、他の地域は酷いだって思ってたけど、そうじゃないんだって安心した」
ミークの様子にラミーは脅かし過ぎたかしら、と思いつつもフフ、と笑う。だが直ぐ真顔に変わる。
「だからこそ、彼等の会話の内容はとても異常なのよ。あんなに女性の事を下げるなんて。まるで物扱いの様子だわ。それに気になっていた事も言っていたわね」
「うん。町長に差し出す、とか何とか」
「……これは間違いなく何かありそうね」
※※※
「キー! あいつ等本当酷いにゃ!」
「全くだね。ファリスでも冒険者はああいう態度の奴も居たけど、それでも警備隊員の皆は普通に町の女性達にあんな態度は取らない」
憤慨するニャリルに同意するエイリー。隊長達の場所から2人が隠れている場所は、少し距離はあるものの、彼女達はそもそも耳が良いのでその内容は聞こえていた模様。
「そうだにゃ! 一体何なんだにゃこいつ等!」
「ん? 今女の声聞こえなかったか?」
ニャリルとエイリーが隠れていた場所の近くにいた警備隊員の1人が、そう言いながらキョロキョロする。2人はそこで、声のボリュームが大きくなっていた事にそこで初めて気付き、しまった、と共に口を手で抑える。
「ああん? お前まで女恋しさに幻聴聞こえる様になったってか?」
「いや違うぞ? 間違いなく聞こえた。確かこの辺……」
1人が茶化すももう1人は気にせず声の聞こえた方へ歩み出す。ニャリルとエイリーは不味い、と思いつつ音を立てない様じっと物陰に潜む。
だがその時、
チュイン、と近づいた警備隊員の武器を何かが攻撃した。
「ウギャア! な、何だ!?」
そのせいで持っていた武器が警備隊員の腕から弾かれ飛ばされる。それを見た傍の警備隊員達は一斉に何事か、とざわめき出した。
「おい! どうした!」
「どっかから攻撃受けたのか?」
「チッ! 一体どこのどいつだ!」
何か強力な力で武器を弾かれた警備隊員は、痺れる腕を抑えながら「あ、あそこに近づいたら……」とニャリル達が隠れている物陰を指差す。それを聞いた警備隊員達は皆武器を構え、警戒しながら少しずつ近づいていく。
騒ぎが起こったのでその方向を左目のスコープ機能を用い見ていたミークは、あちゃあ~、と額に手を当て天を仰ぐ。
「ドローンの防衛機能が反応しちゃったよ。おーいAI、あれは気付かれない様にしなきゃ駄目じゃん。何で攻撃しちゃうかなぁ?」
ーーあの歩み寄りであれば、見つかる可能性89%。よって危険と判断し攻撃したまでですーー
「いやでも11%見つからない可能性あったじゃん」
ーー防衛しろ、との指示でしたのでーー
何だか憮然とした様子で答えるAIに、ミークはしゃーないなあ、と諦め顔。
「ごめんラミー。私のドローンがニャリル達に危険が及ぶと判断して警備隊員攻撃しちゃった」
ミークの謝罪にラミーはきょとんとする。
「どろーん、って、この飛んでいる虫みたいな召喚獣みたいなもの? よね? この子達勝手に考えて攻撃するのかしら?」
「勝手というか、あの2人守れって指示してたんだけど、まさか先制攻撃するとは思わなかった」
ーーそもそもここにいる警備隊員全員であれば、ドローン1機で全滅可能ですーー
「いやだからー! そういう事じゃないの! 私達は見つからない様にしたかったの!」
ーーじゃあ最初からそう仰っしゃればよろしいのでは?ーー
「何で反抗的なんだよ!」
「……ミークはまた誰かと会話しているのかしら?」
「あ、えーっと……」
ーーエマージェンシー。飛翔体がこちらに向かってきます。ドローンにて処理しますーー
そこで急にAIがミークの脳内で真面目なトーンに変わりそう伝えたと同時に、ビュン、という音と共に槍がミークの元に飛んできたが、咄嗟にマイクモードになっていたドローン1機が、その槍をピシュン、とビームで攻撃し叩き落とした。
……? 今何が俺の槍を落とした?
槍を投擲した警備隊長は、何故かその槍は屋根の上にいる黒髪に届かなかった事に首を傾げるも、傍にいたラミーの魔法だろう、と思った様である。
「確かに門番2人の言っていた事は本当だった様だ」
大き目の声でミークとラミーに聞こえる様話す隊長。因みに投擲したのは短い槍、ジャベリン。そして隊長はもう1つのジャベリンを持ちながらミークとラミーが居る屋根を見上げた。
「げ。見つかっちゃった」
「ミークが大声出すからよ」
「あ、そっか私だごめん」
全く、と溜息吐きながらラミーはやれやれ、と肩をすくめながら、ふわりと地面にそっと降り立つ。ミークも申し訳無さそうな顔で同様に地面に降りた。
……2人共空から降りてきた? じゃあどっちも魔法使いなのか? しかし黒髪は魔法使いの格好ではないようだが?
隊長は怪訝な顔をしながらジャベリンを構える。そこで物陰に隠れていたニャリルとエイリーも隠蔽のマントを取り姿を現した。
「あー見つかっちゃったにゃー」
「私達大人しくしてたんだけどなあ」
突然4人の女が姿を現し警備隊員達はざわめく。
「ほら居ただろ?」
「お前等隠れてやがったのか!」
喜色満面で声を出す門番2人だが、一方で警備隊員達は一瞬驚いたものの、皆揃って嫌らしい笑みを浮かべている。
「こりゃあ確かに上玉揃いだ」
「猫の獣人にエルフときたか。いいねぇ~」
「ラミーって名前だけは知っていたが、まさかこんなに美人だったとはな」
「特にあの両目の色が違う黒髪の女。そいつは王女様にも引けを取らない美貌だ」
最後に警備隊長が顎を触りながら他の隊員達同様下卑た笑みを浮かべると、ミークはうげぇ、とあからさまに嫌そうな顔をする。
「うわあ気持ち悪い」
つい心底からの本音を呟くミークだが、警備隊長は気にせず値踏みするかの様にミークの全身をしげしげと下から上へと眺める。自然に口角が上がり益々嫌らしい目つきになるその表情を見て、ミークはぞわわと寒気を催す。
一方ラミーは「王女様を知っているのね」と、警備隊長の言葉が気になった様で質問する。
「一度だけお目にかかった事があるからな、って……、やはりお前があのゴールドランクのラミーか。まあ良い。お前等は門を強行突破した罪で逮捕する」
「強行突破? 私達が?」
「ていうか、女は弱いんだにゃ? どうやって強行突破したにゃー?」
「そうそう。言ってる事おかしいよね」
煽る様に返すニャリルとエイリーに警備隊員達全員がいきり立つ。
「良い女だからって調子に乗るなよ?」
「どうせ冒険者ってのも眉唾だ」
「メダル偽装の罪も付け加えないとなあ?」
それぞれが口々にそう言いながらニャリルとエイリーに近寄る。すると、
ピシュン、ピシュン、と、またも何処からか白い光の線が走り、ニャリルとエイリーに近寄ってきた警備隊員達の腕や足を貫いた。
「う、うぎゃ!?」
「痛てぇ! 一体何だ!?」
「うがあ! お、お前、魔法使いか?」
ーーこれも許されないのでしょうか?ーー
一応ミークに確認するAIに、ミークは呆れながら「もう分かった分かった」と返事する。
「ラミー、こうなっちゃったら全員倒さないといけないと思う」
ミークの誰かしらに話しかけている様子にももう慣れた様で、ラミーは溜息を吐く。
「それってミークのせいではないのかしら? でもまあ仕方が無いわ。気になる事もあるし力づくで聞き出しましょう」
ラミーの言葉が聞こえた様で、警備隊長が呆れた様な顔をする。
「おいおい分かっているのか? 町を守っている警備隊員に逆らうとどうなるのか」
「ええ勿論知っているわ。でもそれはまともな町なら、でしょう?」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。こんな騒ぎになっているのに、町の人達を全く見かけないなんて明らかに異常よ」
ラミーがそう言うと、ミークは周辺の家々を赤外線スコープを用いサーチしてみた。
「確かにどの家の中にも誰も居ないね」
ミークの言葉に隊長は首を傾げる。
「何の証拠があって言っているのか分からないが、とりあえず一緒に来て貰うぞ」
「大人しく言う事を聞くと思っているのかしら?」
そう言ってラミーは手のひらの上に小さな風の竜巻を創り出す。ミークも左腕を前にファイティングポーズを取る。それを合図に、ニャリルは自身のナックルを装着し、エイリーも両腰の小銃に手をかけた。
「強行突破? 私達が?」
「ていうか、女は弱いんだにゃ? どうやって強行突破したにゃー?」
「そうそう。言ってる事おかしいよね」
煽る様に返すニャリルとエイリーに警備隊員達全員がいきり立つ。
「良い女だからって調子に乗るなよ?」
「どうせ冒険者ってのも眉唾だ」
「メダル偽装の罪も付け加えないとなあ?」
それぞれが口々にそう言いながらニャリルとエイリーに近寄る。すると、
ピシュン、ピシュン、と、またも何処からか白い光の線が走り、ニャリルとエイリーに近寄ってきた警備隊員達の腕や足を貫いた。
「う、うぎゃ!?」
「痛てぇ! 一体何だ!?」
「うがあ! お、お前、魔法使いか?」
ーーこれも許されないのでしょうか?ーー
一応ミークに確認するAIに、ミークは呆れながら「もう分かった分かった」と返事する。
「ラミー、こうなっちゃったら全員倒さないといけないと思う」
ミークの誰かしらに話しかけている様子にももう慣れた様で、ラミーは溜息を吐く。
「それってミークのせいではないのかしら? でもまあ仕方が無いわ。気になる事もあるし力づくで聞き出しましょう」
ラミーの言葉が聞こえた様で、警備隊長が呆れた様な顔をする。
「おいおい分かっているのか? 町を守っている警備隊員に逆らうとどうなるのか」
「ええ勿論知っているわ。でもそれはまともな町なら、でしょう?」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。こんな騒ぎになっているのに、町の人達を全く見かけないなんて明らかに異常よ」
ラミーがそう言うと、ミークは周辺の家々を赤外線スコープを用いサーチしてみた。
「確かにどの家の中にも誰も居ないね」
ミークの言葉に隊長は首を傾げる。
「何の証拠があって言っているのか分からないが、とりあえず一緒に来て貰うぞ」
「大人しく言う事を聞くと思っているのかしら?」
そう言ってラミーは手のひらの上に小さな風の竜巻を創り出す。ミークも左腕を前にファイティングポーズを取る。それを合図に、ニャリルは自身のナックルを装着し、エイリーも両腰の小銃に手をかけた。
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