第5話
土塊にかかるエネルギーは
また時が経ち、天を制することのないまま革命が起き、王が
〝異端児〟は他の学者が棚上げした穴の深さにこだわり、およそ一万三千路の数字を、正しいと考えた。これを実証するために、自国の中でも最も緯度経度が明確な穴──すなわち古く有名な塔のすぐ根元、白っぽい砂の土に穿たれた穴に赤い旗を立てた。そしてぶつぶつ呟きながら星球儀をくるりと回すと、ある一点を指でこつんと突き、仲間を集めて冒険隊を組んだ。
冒険隊は先頭に立つ〝異端児〟に忠実だった。
その後も何度となく冒険隊を組み、〝異端児〟は穴の位置を確かめ続けた。穴は一点ではない、星を貫いて、二点開いている。数字は正しかった。土塊昇天現象はまるで球体を
〝異端児〟は張り切って論文を書いた。伸ばしっぱなしの赤茶色の髪や
「碧海はどうするんだ」
幼い頃から共に学びいつも一番の味方だった親友はそう言って、〝異端児〟の肩を叩いた。
「お前は碧海を忘れている。陸地ばかりを計測するな。反対位置に碧海のある穴はどうなってる? もし本当に穴が星を貫いているのなら、なぜ海水が出てこない? それに地層学も考慮しろ。この星は土だけでできてるんじゃないんだ」
親友は正しかった。星は陸よりも碧海の面積が広く、穴の位置を計測するならば考慮しなければならないが、〝異端児〟はそれを避けていた。そして近年誕生したばかりの地層学によれば、この星の地中はさまざまな質の土や泥、石が層となっているもので、土塊昇天現象が吐き出すようなただの土塊は、ほんの数路分、星の表層にしか存在しないという。それは実測され、実際に採掘することで明らかになった本当の事実だった。
もはや土塊昇天現象についてまともに研究すること自体が常軌を逸していた。いったいこれは何なのだ? 〝異端児〟は
「星よ、あなたはなぜ人にこれを見せるのだ。正体を明かさないのに、闇雲に驚かせるのはやめてほしい」
星塊哲学者たちが何度となく問う命題を、〝異端児〟は馬鹿馬鹿しいと思ってきたが、この時ほど自分が〝最後〟であったらと願ったことはなかった。もう驚きたくない。好奇心は毒だ。
〝異端児〟は酒に
その時〝異端児〟は気づいた──これまで穴が
翌朝から〝異端児〟はあらゆることを
「私が生きているうちに真実にたどり着くことはないだろう。私は謎の答えを知らずに死ぬ。とても残念だ。だが覚悟は決まった」
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