終わり
それでも、トルディーナは、諦めなかった。
「ですが!!今、人間を苦しめても、雲も、空も、元には戻りません!!確かに、雲も、空も、汚したのは人間です!!ですが、それを戻す事が出来るのも、先ほど申し上げたように、人間しかいないのではないでしょうか!?人間の関係の中に、信頼と言うものがあります!!雲の神々様!!人間を、もう一度、もう一度、もう一度だけ、信頼していただけないでしょうか!?」
神々は、トルディーナの剣幕に、少し押された。さすが、雲の国をも総べる空の姫、トルディーナである。
「…サンドハード様…一度…我々は、手を引いては…」
雨の神、ピョーチャが、そっと声を上げた。その声に、トルディーナは、瞳を輝かせた。
「ピョーチャ!お前は人間を赦せるのか!?」
「あ…いえ…失礼を…」
ピョーチャは、すぐに下を向いて、何も言っていない、と言うような顔をした。
「私の…」
神々の怒りが、どこか静まりかけた時だった。トルディーナは、とんでもない事を言い出した。
「私の命を…空の国の座を、神々様方が選んだ方にお譲りします…。干ばつが、大雨が、大雪が、雹が、雷が止まっても、人間が、何も変わらなかったら…、私は、人間たち全てを連れ、空の彼方へと消えて無くなります。それでも…赦していただく事は…出来ませんか…?」
「何を言う!!トルディーナ!!」
ずっと、雲の影に隠れ、様子を見守っていたアイオが、もう我慢ならん、と言った感じで、口を挟んできた。
「本気か?トルディーナ…」
サンドハードが低い声で言った。
「サンドハード!貴様!」
「アイオ!!黙りなさい!!これは、空の姫、トルディーナの決めた事。貴方にも口を出す事は赦しません!!」
「トルディーナ…」
アイオは、もう何も出来ない。
「はい…。本気です。サンドハード様…。その代わり、人間が、少しでも思い直す事があれば、その時は、どうか―――…」
そう言って、トルディーナは、深々とサンドハードと、神々に頭を下げた。
「……分かった…。トルディーナ、そこまでの覚悟があると解った上で受け入れぬほど、私も石頭ではない。只、約束は、約束だぞ?」
サンドハードは、重く、釘を刺すように、トルディーナに言った。
「トルディーナ…」
アイオが、とても、悲しそうなピンク色の瞳で、トルディーナの横顔を見つめている。そのアイオに振り向くと、ニコッと、トルディーナは笑った―――…。
そして、神々によって、1年に及んだ、大干ばつ、大雨、大雪、雷、雹から、嘘のように地球は、解放された。
人々は、久しぶりの雨に、全身を濡らし喜んだ。そして、笑顔で抱き合い、涙を流し自然に感謝し合い、そして―――…、地球の人々、全てが、空を、仰いだ。
「こなに…雲は、白くて、こんなに…空は、綺麗だったんだね…」
ある一人の、人間が、ぽつりと、そう、呟いた―――…。
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