説得

「争う気は、一切ありません!!慰みを、受けるつもりもありません!!ですが、私は空を牛耳る姫!!私の話を聞いてください!!」


トルディーナは、怖い気持ちをお押さえ、震える手を握りしめ、語った。


「雲の神々様!人間は、確かに愚かです!核兵器を保有し、使用し、幾度となく戦争をしてきました。今も、一部では戦争が行われています!石油や石炭をなくなるほど使い、それはそれは汚れた雲を生み出し、二酸化炭素出し続け、温暖化を進め、貴方がたの怒りを買い、大洪水を巻き起こす大雨やあらゆるものを破壊する大粒の雹、地が干上がるほどの雨をもたらさない日々、家々を粉砕するほどの雷、外に出る事すら許されない大雪…。それらを、私は人間だった頃、空のせいだと思っていました。ですが…だから…貴方がたが、人間に対して、どれほどの怒りを持っていらっしゃるのか、私は空の姫、トルディーナとして転生して初めて知りました」


「見た事か!!お前のような浅はかな空の姫に、我らの本当の怒りなど、知る由もないわ!!貴様などと話している暇はない!!ここで殺してやっても構わぬのだぞ!?」


「ですが!!」


「!?」


サンドハードたちが、トルディーナの大声に、少し、足が後ろに引っ張られるようだった。


「ですが!!お願いです!!もう少しだけ、もう少しだけ、待っていただく事は出来ませんか!?人間の中でも、過ちを認め、正しい道を進もうとしている者がいます!!確かに、雲の国を…空の国を、汚したのは人間です!!それでも、それを治してゆくのも、また、人間の力でしか成りえず、責任であり、義務なのでは無いでしょうか!!一生懸命に、自然破壊を食い止めようとしている人間もいるのも事実なのです!!ですから、どうか、どうか、もうすこしだけ、時間をください!!」


トルディーナは、懸命に訴えた。


「…お前は、もはや空の国の姫なのだぞ?何故人間のようなくだらない、雲を…お前の国である空をも汚す人気を救おうとする。そんなものたちを救って、お前に何の得があると言うのだ!?」


「サンドハード様、それは…こう、お答えする他ありません。このように、人間を苦しめて喜んでいる様では、貴方がたも、貴方がたの言う、くだらない人間と同じだから…と…」


「何ぃ!?我らを愚弄する気か!?」


「サンドハード様!雲の神々様に、私の空の国を反乱を起こし、滅茶苦茶にしたところで、人間は、全滅することはありません!もしも、これ以上このような異常な出来事が起こり続ければ、人間は、また道を踏み外し、争い、奪い合い、殺し合うやも知れません!!そうなれば、核兵器ばかりか、それを超えるもっともっと恐ろしい武器を造り出すかも!!そうなれば、もはや、空の国は…雲の国は…いいえ、地球は終わりです!!只の、どす黒い惑星に成り下がる事でしょう!!」


「うぬぬ…」


サンドハードが押し黙った。


「お願いします。サンドハード様、この雨を、雷を、干ばつを、大雪を、雹を…止めてください…!!」


しばし、沈黙が生まれた。そして、押し黙っていたサンドハードがやっと口を開いた。


「それらを止めれば、人間は本当に変わるのか?本当に、我々がかつて過ごしていた平和な雲の国に戻ると申すのか?」


「…それは…」



今度は、トルディーナが押し黙る番だ。



「やはりな…。只の小娘に、出来る事と出来ない事があるのだ。身を引け!!」


「!!」


余りの剣幕に、トルディーナは、説得は、難しいかも知れない…と、思ってしまった―――…。

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